ITインフラとは-構成要素や構築についてわかりやすく解説
インフラという言葉をご存知ですか?インフラはインフラストラクチャーの略称で、生活や産業の基盤となる設備や施設を指します。
身近な例としては、電気・ガス・水道の設備は「生活インフラ」に該当します。では、ITインフラとは、何を指すのでしょうか。
順を追って、わかりやすく解説していきます。
ITインフラとは
「ITインフラ」とは、IT環境の基盤になっているものを総称したもので、情報システムを稼働させる基盤となるコンピュータやサーバーなどの機器、OSやデータベース、LANなどのネットワークを指します。
これらは全てITシステムの土台となる部分であり、ITインフラが整備されていないとパソコンでSNSなどのサービスを利用することができません。それほどITインフラは現代の生活に欠かせない存在となっています。
ITインフラの構成要素
ITインフラは主にハードウェアとソフトウェアの2つから構成されています。それぞれの構成要素を詳しく解説します。
ハードウェア
ハードウェアとは、パソコンやサーバーなどの物理的な設備のことを言います。
パソコン | 基本的に個人で使用することを目的とするコンピュータを指します。 ノート型やデスクトップ、最近では2in1と呼ばれるタブレットとの一体型など、多くのタイプが存在します。 |
サーバー | プログラムやファイルなどを保管し、複数の端末から共有できるコンピュータのことを指します。 また、複数の要求を処理するため休みなく稼働します。 |
ストレージ | 大容量のデータを保存できる機器を指します。 サーバーと比べ、データの格納に特化しているため、より大容量のデータを保存することができます。 また、データの読み込みや書き込みを高速処理することもできるのが特徴です。 |
ネットワーク | サーバー・パソコン・ストレージなどを相互接続しているシステムを指します。 LANケーブルを用いた有線タイプと、Wi-Fiなどの無線タイプがあります。 |
ソフトウェア
ソフトウェアとは、パソコンやサーバーなどのコンピュータを作動させるためのプログラムを指します。物理的な構成要素であるハードウェアは、適切なソフトウェアを組み込むことで初めて本来の目的を果たすと言えます。
OS | コンピュータを動作させるためにプログラミングされた、基本となるソフトウェアのことを指します。 パソコン用のWindowsやmacOS、サーバー用のLinuxやWindows Serverなどが代表的なOSです。 また、同一の組織内で使用するパソコンは管理業務を標準化するために同じOSとバージョンで統一されていることが望ましいです。 |
ミドルウェア | OSとアプリケーションの橋渡しを行うソフトウェアのことを指します。OS単体ではできない複雑な処理を担当します。 |
ITインフラの形態
多くのITシステムツールは、主に以下の2種類に分類されます。
オンプレミス型
オンプレミス型とは、社内にサーバーや通信回線・システムを構築して、自社で運用する形態です。
クラウド型
クラウド型とは、オンライン上のサーバーで提供されているシステムやサービスをインターネット上で利用する形態です。近年ではさまざまなクラウドサービスが登場しています。
クラウド型ワークフローシステムは、自社でサーバーやインフラ環境を準備する必要がなく、低コストかつスムーズに利用を開始できるため、多くの企業に普及しています。
ITインフラの構築におけるポイント
ITインフラはシステムの基盤です。ITインフラを構築する際に最も気を付けたい3つの注意点について解説します。
1.課題確認と目的
ITインフラを構築する際には、目的を明確にすることが重要です。
具体的には、5W2H(なぜ、なにを、どこを、誰が、どのように、いつ、いくら )を明確にすることが役立ちます。
5W2Hを明確にすることで、漏れや曖昧さをなくし、品質向上に繋げることができます。
2.安全性
社内データは、企業として重要な資産です。
この資産を守るためには、ネットワークを介した不正アクセスや情報漏洩を防ぐための対策が非常に重要な課題となります。
アクセス制限や利用制限、セキュリティシステムの導入等を行い、情報の安全性を確保するなどの対策を立てましょう。
3.快適性
パソコンやサーバーの処理能力は、生産性に直結する重要な要素です。
処理能力不足は作業効率の低下だけでなく、従業員のモチベーション低下など、悪循環を引き起こす可能性があります。
そのため、ITインフラに見合った性能の機器を準備したり、ネットワーク管理をシンプルに修正したりすることで快適性を確保する必要があります。
ITインフラの構築と運用の流れ
ITインフラは、基本的に要件定義、設計と構築、テスト、運用の4つのフローを経て構築されます。
外注する場合も多いのですが、手順を理解することでスムーズに進められるようになります。
検討段階でも、インフラ構築の手順を把握することをおすすめします。抽象的でもよいので、手順を理解することで、より効果的にインフラ構築を進めることができます。
要件定義
ITインフラを構築する際には、はじめに必要な機能や要望をまとめます。
可視化し細かい部分までまとめることで、問題点を認識しやすくなります。
要望がまとまったら、関係者全員で取捨選択を行い、本当に必要な部分だけを抜粋して要件として落とし込みます。
この工程には一定以上の専門知識が必要です。
外注する場合も同様に、必要な機能や要望をヒアリングし、その会社が求めるITインフラの要件を明確にしていきます。
全体設計と機能設計
はじめに、要件定義に従ってITインフラの設計をおこないます。配線やセキュリティ設定等、各所を確認しながら基本設計書や詳細設計書を作成します。
全体の設計を俯瞰したうえで、求めるサービスに合った機能を調整していきます。また、この段階で詳細な構成が決まるため、障害対策やリカバリー方法なども明確にするよう心掛けます。
外注の場合は、この段階以降に修正が生じると影響範囲が大きくなることが予想されます。そのため、齟齬がないことを確認し、問題があれば早めに修正するようにしましょう。
設計に沿って構築
設計が完了したあと、作成された詳細設計書通りに、ハードウェアやネットワークの設定、OSやミドルウェアの導入と設定をおこないます。
テスト
計画や設計書通りにシステムが稼働するか、正常動作および異常動作をテストします。
テストは粒度に応じて3つのパターンに分類できます。
1.単体テスト
それぞれの機器や設定を単体で検証する方法です。
最初に定めた要件を満たしているかを確認し、もし正常に動作しなかった場合は問題の箇所を特定して修正します。
2.結合テスト
次に、複数の機器を連結させて一連の動作を確認するための結合テストをおこないます。
単体テストをクリアしても、複数の機能が組み合わさることで干渉し合い、正常に動作しない場合があるためです。
3.システムテスト
最後に本番を想定したテストをおこないます。
単体テストや結合テストは、正常に動作するかを確認するテストですが、システムテストでは処理速度や耐久性に目を向け、性能のテストや負荷試験などをおこないます。
運用
テストに問題がなければ、実際にITインフラの運用を開始します。
ITインフラの構築担当者と運用担当者が異なる場合、運用担当者は要件定義の段階からプロジェクトに参画するなど、運用習熟期間の設定を含め運用をスムーズにおこなうための取り組みが必要になります。
また、ITインフラは運用を開始したら終わりではありません。
業務を円滑に進めるには、障害対応の方法や不具合の再発防止策をマニュアル化する必要があります。
不測の事態や障害は突然発生するため、事前にマニュアルを準備しておくと安心です。
ITインフラのセキュリティの重要性
現代社会では、企業としての社会的責任と言っても過言ではない社内情報の管理が求められます。現代社会ではさまざまなリスクを想定し「情報」をどのように扱うかが重要な課題になります。もし社内情報が漏洩してしまった場合、自社だけでなく取引先や社会にも影響が及ぶことがあります。また、コンプライアンス違反や個人情報保護法の厳格化など、情報セキュリティ対策の重要性は年々高まっています。
情報セキュリティにおいて大切な3つの要素を紹介します。
要素 | どのような状態か | 有効な対策方法 |
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機密性 | 正当な権利を持つ者だけアクセスできる状態 | ・アクセス制限 ・暗号化 ・パスワード認証 |
完全性 | 正確な情報が揃っており、他者によって改ざん・破損できない状態 | ・不正アクセス検出 ・改ざん検知 ・デジタル署名 |
可用性 | どんな場面でもシステムダウンせずサービスが継続できる状態 | ・バックアップの確保 ・システムのクラウド化 |
まとめ
ITインフラとは、ITシステムを支える土台部分を指します。「ハードウェア」には、パソコンやサーバー等があり、ITインフラとしての「ソフトウェア」には、OSやミドルウェア等が含まれます。自社に合わせたITインフラの構築には、生産性向上だけでなく、情報資産の管理や業務の自動化など、幅広いメリットがあります。ただし、セキュリティや小さな変化に対応するなど、運用に関する課題も少なくありません。企業のITインフラを深く理解し、柔軟性を身に付けることが、最大限に活用するための鍵になるでしょう。