施工計画書とは:作成のポイントを徹底解説
「施工計画書ってどう書けばいいの?」、「施工計画書を作成しなければならないけれど、失敗しないか心配」と、このように考えている人は多くいます。施工計画書は、建築業者が工事全体の進行を計画し、管理するための重要な書類です。不備があると、工事がスムーズに進まなかったり、コストがかさんだりするリスクがあります。作成にあたって不安になるのも無理はありません。
そこで今回は、「施工計画書を作成するポイント」を解説します。作成の際に知っておきたい「作成手順」や「注意すべきポイント」も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
施工計画書とは?
施工計画書は、工事全体の計画と管理をまとめた重要な書類です。工事の進行をスムーズにするために、工事の開始前に作成します。
例えば、大規模な建設プロジェクトでは、各工程の詳細な計画がなければ、スケジュールがずれたり、予算が超過したりするリスクがあります。施工計画書を作成することで、工事の進行を効率的に管理し、トラブルを未然に防ぐことができます。
そのため、国土交通省「建築業法」によって、請負代金が500万円以上かかる場合は、必ず施工計画書を作成し、監督者へ提出しなければいけないと法律で義務付けられています。たとえ500万円未満であったとしても、指示があれば提出が必要です。
施工計画書を作成する前に、まずは以下の2つのポイントを覚えておきましょう。
- 施工計画書と施工要領書の違い
- 施工計画書の記載内容
施工計画書と施工要領書の違い
施工計画書と似ている書類に施工要領書があります。
施工計画書は、施工会社が工事全体の計画と管理を記載するもので、どのように施工を進めていくかの指針となります。一方、施工要領書は、施工に関わる協力会社が具体的な作業手順や方法を説明する書類です。つまり、両者は作成する会社が異なります。
施工会社と協力会社の間に齟齬が生まれないよう、注意しなければなりません。
施工計画書の記載内容
施工計画書には、工事の全体像を示すための重要な情報を記載する必要があります。以下の情報です。
- 工事の概要
- 計画工程表
- 現場組織図
- 指定機械・資材
- 主要機材
- 施工方針・方法
- 施工の管理計画
- 安全・衛生管理
- 緊急時の体制と対応
- 交通管理
- 環境管理対策
- 現場環境の整備
- 再生資源の利用の促進と建設副産物の適正処理方法
- 届出・手続き
工事の目的やスケジュール、使用する材料や機器のリストなどを漏れなく記載しましょう。関係者全員が同じ情報を共有し、工事の進行を円滑に進められるようにします。施工計画書によって工事の計画が明確になり、トラブルを未然に防ぐことができるでしょう。
なお、施工計画書は契約後30日以内の提出が基本です。円滑に作成できるよう、資料は前もって集めておくことをおすすめします。
施工計画書の作成手順
施工計画書を作成する際に困るのが、どのような手順で作ればいいのかという点です。特にミスや漏れがないように作成する場合、注意すべきポイントが複数あります。そのため、一つずつ丁寧に手順を進めていくことが大切です。
以下の手順を参考にしてください。
- 工事に関する書類や内容を確認する
- 現場の状況を確認する
- 発注者と協議をする
- 施工計画書のひな型を用意する
- 施工計画書を作成する
施工計画書の作成前に、必要な情報と資料を整理するようにしましょう。計画書の質を高めるためには、工事に関する契約書や設計図、図面などの情報を集める必要があります。
この際、意識したいのが現場の状況です。施工計画書は現場状況を反映して作るため、なるべく現場に足を運び、現在の状況を確認しておきましょう。実際の施工内容を想定しながら確認すると、計画書の作成がスムーズになるのでおすすめです。
工事や現場に関してある程度の情報を集めたら、発注者とも協議をします。施工内容や方針に相違がないかを確認することが重要です。これによりトラブルを防ぐことができます。この時点で疑問点や不明点をなるべく解消しておくと、後がスムーズです。
発注者との協議が終われば、施工計画書を作成します。施工計画書の形式にひな型がある場合は、そちらを利用しましょう。自治体や整備局などから入手できるひな型も活用すると、作成の手間を軽減できます。工事に合わせてアレンジを加えながら、全体をまとめてください。
施工計画書の作成に活用できるツール
施工計画書は、ツールを使うと簡単に作成できます。特に以下の2つのツールは使いやすいので、積極的に活用しましょう。
- 表計算・文書作成ソフト
- 専用のソフトウェア
表計算・文書作成ソフト
施工計画書を作成する際、表計算と文書作成ソフトが非常に役立ちます。計画書の内容を整理し、見やすくするために必須です。作成した施工計画書の保管もできます。代表的なツールは以下の2つです。
- Word
- Excel
どちらもパソコンにインストールされているケースがほとんどでしょう。無料のテンプレートも多くあり、施工計画書以外の書類作成でも活用できます。
専用のソフトウェア
施工計画書の作成には、専用のソフトウェアも非常に有効です。専用ソフトなので、書類作成だけでなく、図面管理や進捗管理といった業務上便利な機能が豊富に搭載されています。細かい部分までフォローしてくれるので、より正確な計画書作成も可能です。
ただし、注意したいのは有料のものが多いという点です。搭載されている機能もツールによって異なるため、自社に合ったツールを選ぶ必要があります。
施工計画書を作成する際の注意点
施工計画書を作成する際には、注意したいポイントがあります。特に以下の3つは重要です。
- 現実的なスケジュールを設定する
- リスク管理を徹底する
- 関係者との連携を強化する
現実的なスケジュールを設定する
非現実的なスケジュールは、工事の遅延や品質低下の原因になります。現実的なスケジュールを設定するようにしましょう。難しい場合は、過去のデータを参考にするとスケジュール設定がしやすくなります。
リスク管理を徹底する
リスク管理を明確にしておくことも大切です。リスク管理を怠ると、予期せぬトラブルが発生する可能性があります。天候不良や資材の遅延など、考えられるリスクを事前に洗い出し、対策を講じておきましょう。予期せぬ事態にも迅速に対応でき、工事を円滑に進められます。
関係者との連携を強化する
関係者との連携強化も大切です。連携が上手くできていないと、情報の共有不足や誤解が生じる可能性があります。作成の際は定期的なミーティングを実施して計画内容を共有し、意見交換をしましょう。関係者全員が同じ認識を持てるようになります。
施工計画書を作成する際のポイント3つ
施工計画書を作成するにあたって、意識したいポイントがあります。先述した注意点のほかに、以下のポイントを意識しましょう。
- 実現性のある内容にする
- 現場作業員の負担を考慮する
- 5W1Hを明確にする
実現性のある内容にする
施工計画書には、実現可能な内容を盛り込むようにしてください。無理な計画はトラブルの原因になります。また、工事が完了した際には、施工計画書と実際の成果を比較して評価されます。内容と成果に齟齬があると発注者からの評価が下がってしまうため、注意が必要です。
発注者からの評価は今後の取引にも影響するため、発注者を落胆させないように、無理のない計画を立てましょう。
現場作業員の負担を考慮する
施工計画書は、現場作業員の負担を考慮して作成しましょう。過剰な作業負担は、ミスや事故の原因になります。生産性にも悪影響を及ぼしかねません。最悪の場合、施工の品質が下がってしまう可能性もあります。そのため、現場の負担が大きい部分や計画通りの進行が難しい部分については、作業員が無理なく働けるスケジュールを組むようにしましょう。作業員の健康と安全を守り、工事の品質を保つことができます。
5W1Hを明確にする
施工計画書には、5W1Hを明確に記載するようにしましょう。以下を意識してみてください。
- Who:誰が
- When:いつ
- Where:どこで
- What:何を
- Why:なぜ
- How:どのように
これらを具体的に書くと、誰でも理解しやすい内容になります。曖昧な計画は誤解を招きます。工事を円滑に進めるためにも、わかりやすい内容を意識して作成しましょう。
まとめ
施工計画書の作成は、工事の成功を左右する重要なステップです。実現可能な内容を盛り込み、現場作業員の負担を考慮し、5W1Hを明確にすることで、計画書の質を高めることができます。また、現実的なスケジュール設定やリスク管理、関係者との連携強化も忘れずに行いましょう。適切なツールを活用し、詳細で実用的な施工計画書を作成することで、工事を円滑に進め、発注者からの評価を高めることができます。この記事が、施工計画書作成の一助となれば幸いです。