カタログ確認の時間を3分の1に短縮!TCDが取り組む業務DXの核心

「44車種(2025年7月時点)のカタログをグループメンバー6名でチェックしていました」。そう語るのは、株式会社トヨタカスタマイジング&ディベロップメント(以下、TCD)の家髙氏。各車種の価格や仕様などを記載したカタログは、わずかな誤記が信用問題につながる重要なものです。しかし、従来の目視によるチェック作業は時間も人手もかかり、内容の正確性を担保するには限界がありました。そんな課題に対し、導入されたのがExcelアドイン型の自動転記ツール「ジーニアルAI」です。今回は、TCDの営業企画本部で企画・販促を担当する家髙氏にお時間をいただき、ツール導入の背景と成果についてお話を伺いました。
※ こちらの音声は、Google NotebookLM によって AI が生成したものです。そのため、発音や内容が正確でない場合があります。
個性あるモビリティを届けるTCDのものづくり

― まずは、TCD様の事業内容について教えてください。
家髙:当社は、「モビリティ社会に際立つ個性を」をミッションに掲げ、自動車関連の3つの主力事業を展開しています。「用品事業」、「架装事業」、そして「特装事業」です。
― それぞれ、どのような内容でしょうか。
家髙:用品事業では、全国トヨタ販売店様を通じて、「モデリスタ」や「GR PARTS」といったブランドでパーツやコンプリートカーを企画・販売しています。たとえばSUVにルーフラックやサイドステップを追加するなど、見た目と機能の両方を高めるパーツをラインアップしています。
架装事業では、トヨタのネットワークを活用した、J-PIO (Japan-Port Install Option) [海外向け日本生産車の用品架装、車両特装] などにより、全世界へ向け、魅力ある価値・商品を提供しています。
特装事業では、救急車や道路パトロールカーなど、特別な役割を持つ車両を開発・生産しています。「トヨタ高規格救急車ハイメディック」は、国産初の高規格救急車として現在も国内トップシェアを誇っています。
― 様々なパーツを扱い、多様な車種に対応しているのですね。
家髙:はい。私たちのグループでは、44車種(2025年7月時点)分のカタログ制作と販促支援を担当しています。カタログは製品紹介だけでなく、営業現場の提案ツールとしても重要なので、見やすさや使いやすさを意識して制作しています。
― その業務は、どのような体制で対応されているのでしょうか。
家髙:企画・販促グループは8名体制です。販売店様が店頭で提案しやすくなるよう、各車種に合わせた販促施策の企画・提案や、キャンペーン施策などを手がけています。最近ではWebでの情報発信にも注力しており、紙媒体に限らず、より幅広いチャネルでの訴求方法を模索しているところです。カタログ制作に関しては、グループの6名で対応しており、それぞれが複数の車種を受け持ちながら業務を進めています。
確認作業に月6割!本来やりたい仕事が後回しになっていた

― ツール導入前は、どのような業務上の課題を感じていたのでしょうか。
家髙:私たちはお客様向けに、トヨタやレクサスの車両カタログに付属するディーラーオプションカタログ(いわゆる後付け用品カタログ)を制作しています。現在、対象車種は44。パーツの注文コード、価格、グレードごとの適合可否など、非常に細かい情報を正確に掲載する必要があります。それらを一つひとつ、人の目で確認していました。
― メンバー6名で分担したとはいえ、かなりの分量になりますね。
家髙:はい。カタログ1冊あたり数ページ~数十ページ、それが車種ごとにあるので、年間では1,000ページを超えるボリュームです。PDFで出力したレイアウトと、元になるExcelのデータを見比べながら、目視で突き合せるという作業をメンバーで分担して行っていました。
― かなりの時間を費やしていたのではないですか。
家髙:そうですね。月あたりの稼働のうち、6割近くがこのチェック作業に取られていたと思います。もちろん確認は重要な仕事ですが、企画・販促グループとしては、もっと「本来やりたい仕事」に時間をかけたいと考えていました。そのためにも、属人的な確認作業から脱却し、業務DXを進める必要性を強く感じていました。

― どういった業務が「本来やりたい仕事」なのでしょうか。
家髙:例えば、車の性能を高めることに主眼を置いたブランド「GR PARTS」の販促です。このパーツは、見た目だけではなく、乗り心地や運転のしやすさといった、乗って体感して分かる良さをどう伝えるかが課題でした。そこで、「うんこドリル」とのコラボを企画しました(笑)。親しみやすいキャラクターと組み合わせることで、難しい話もぐっと身近に感じてもらえたと思います。ファミリー層にも好評で、とても手応えがありました。
― ユニークな施策ですね。
家髙:はい、そういった攻めの企画をもっと増やしたいと思っています。でも、実際には日々の確認作業に追われて、時間も気力もそちらに持っていかれてしまう。アイデアを出す余裕が持てないというのが、ずっと課題でした。
― 確認作業は、単に時間がかかるだけでなく、精度の確保も大変ですよね。
家髙:まさにそのとおりです。いくらダブルチェックをしても、人の目には限界があります。たとえば価格などに誤りがあると、販売店様から「データと違う」という問い合わせが入ります。場合によってはトラブルに発展してしまい、お客様や販売店様に多大なるご迷惑をお掛けしてしまうケースもあります。信用にも関わるので、決して軽視できません。
トライアルで「これは使える」と実感!

― ジーニアルAIを導入する決め手となったポイントを教えてください。
家髙:一番大きかったのは、トライアルで実際に効果を実感できたことです。目視での確認作業では見落としてしまうような誤りを、ジーニアルAIがしっかりと検出してくれました。最初は「本当に使えるのかな?」と半信半疑でしたが、目の前でミスを見つけてくれるのを見て、「これはいけるな」と思いました。
― トライアルの段階で、すでに成果が見えていたわけですか。
家髙:はい。カタログは、44車種(2025年7月時点)分あって、細かい仕様や価格が全部バラバラです。ミスが出るたびに、社内だけじゃなくてお客様にも迷惑がかかる。チェックの効率化の観点から、ジーニアルAIはまさにぴったりだと思いました。
― チェックの完全な自動化を目指したのでしょうか。
家髙:いえ、そういうわけではありません。いままでは、人の目でのチェックしか方法がなかったですが、やっぱり人間はミスするものです。しかも、慣れてくると見逃すこともある。ジーニアルAIを通すことで、人的ミスを機械的に拾える安心感がある。簡単にダブルチェックできる体制を作れると考えました。
― 社内での承認はスムーズでしたか。
家髙:はい。上司がこういった業務改善に前向きなタイプで、デモを見せたら「これ、いいね」とすぐ理解してくれました。費用感も納得できる範囲だったので、稟議もすんなり通りました。
カタログのチェック時間を64%も削減

― ジーニアルAIを導入したことで、どのような変化がありましたか。
家髙:ある時、カタログに記載ミスが見つかりました。現場対応に追われるなど、影響は小さくありませんでした。それをきっかけに、「全車種を一斉にチェックせよ」と社内で指示が出ました。とはいえ、44車種すべてとなると、確認作業の負荷は相当なものです。
以前のようにすべて人の手でチェックするとなると、全体で22時間かかる想定でしたが、ジーニアルAIを活用したことで、同じ作業が8時間程度にまで短縮されました。効果を強く実感しています。
― 約3分の1に作業時間を削減(64%の削減)できたわけですね。
家髙:はい。もちろん、最終的には人の目でも確認していますが、ツールで差分や異常値を事前に検出できるため、目視の範囲がぐっと絞れます。結果的に集中力も維持しやすくなり、疲労感もかなり違います。チェック作業の質も変わったと感じています。
― 通常業務での活用も進んでいますか。
家髙:人の目では気づきにくい誤記も、ジーニアルAIがしっかり拾ってくれるので、確認精度は明らかに上がっています。ただ、現時点では私を含めた一部のメンバーが中心となって運用している段階です。私自身の実感としては、確認作業にかかる負担を半分くらいに減らせるのではと考えています。今後、活用の範囲がさらに広がっていけば、グループ全体の業務効率も大きく変わってくると思いますし、非常に期待しています。
人がやるべき仕事に集中できる体制を目指して

― ジーニアルAIをさらに効果的に活用していくために、どのような工夫や取り組みをお考えでしょうか。
家髙:まずは、カタログのチェック作業のさらなる効率化ですね。現在は、業務全体の約6割を確認作業が占めていますが、これを3割程度にまで圧縮したいと考えています。そのためには、ツールの力だけでなく、フローそのものを見直す必要があります。
― 具体的には、どのような見直しを考えていますか。
家髙:今後は、カタログの元データそのものを整理していく必要があると考えています。現在はExcelで管理していますが、情報を入力する担当者によって記載方法にばらつきがあります。また、情報が複数のシートにまたがっているため、ツール側が正確に読み取るには不向きな構造になっています。そうした状態を改善し、ジーニアルAIが処理できるような「データの土台」を整えることが、今まさに取り組んでいる課題です。
― ツールの性能を引き出すうえでも、データ構造の見直しが重要なのですね。
家髙:そうです。商品点数が多い当社のような業態では、いくら良いツールを導入しても、元データの整理ができていなければ本来の効果は得られません。その点で、ジーニアルAIは導入後の支援が非常に手厚く、勉強会や個別相談の中で、データの持ち方や整理の仕方についても一緒に考えてくれます。単なるツール提供にとどまらず、運用の面でも伴走してくれるので、心強い存在です。
― 最後に、今後の展望や意気込みをお聞かせください。
家髙:私たちが目指しているのは、単なる業務の効率化ではなく、「人が本来取り組むべき仕事に、しっかりと時間を使える環境を整えること」です。チェック作業に追われるのではなく、より多くの時間を販促の企画や提案といった創造的な業務に充てられるようにしたい。これからも、そうした環境づくりを見据えながら、DXの取り組みを継続的に進めていきたいと考えています。
株式会社トヨタカスタマイジング&ディベロップメント
住所:神奈川県横浜市港北区師岡町800
設立:2018年
従業員数:947人(2025年8月現在)
事業内容:
・国内・海外向け特装車両の企画・開発・生産・販売・アフターサービス
・輸出用日本生産車への用品架装・特装に関わる企画・開発・生産・販売・アフターサービス(補給部品、関連部品・用品の販売・供給)
・MODELLISTA・GR PARTS(トヨタ自動車タイアップカスタマイズ商品、トヨタ販売店特別仕様車)などの企画・開発・販売
・トヨタ自動車からの開発受託
URL:https://www.toyota-cd.co.jp/