内部監査とは – 目的や種類、手順について詳しく解説

2023-11-01
2023-07-28
内部監査とは - 目的や種類、手順について詳しく解説

内部監査は企業経営において不可欠なプロセスであり、組織の健全性やリスク管理の確認に重要な役割を果たしています。その実施は、企業が持つ内部統制や業務プロセスの評価を通じて、不正やミスの防止、適切な意思決定の支援を目的としています。本記事では、内部監査の意義や目的、求められる企業の特徴、さらに種類や手順について詳しく解説します。

内部監査とは

一般社団法人日本内部監査協会による「内部監査基準」では、内部監査の定義が以下のように書かれています。内部監査とは、組織体の経営目標の効果的な達成に役立つことを目的として、合法性と合理性の観点から公正かつ独立の立場で、経営諸活動の遂行状況を検討・評価し、これに基づいて意見を述べ、助言・勧告を行う監査業務、および特定の経営諸活動の支援を行う診断業務である。
これらの業務では、リスク・マネジメント、コントロールおよび組織体のガバナンス・プロセスの有効性について検討・評価し、この結果としての意見を述べ、改善のための助言・勧告を行い、支援を行うことが重視されます。

参考:https://www.iiajapan.com/leg/guide/kijyun/

内部監査の目的

内部監査の主な目的は、以下の点にあります。

  1. 企業の健全性と信頼性の確保
    内部監査は組織の運営を評価し、企業の健全性と信頼性を確保する役割を果たします。適切な内部統制を確立し、リスクを最小限に抑えることで、組織の安定性を確保します。
  2. リスクマネジメントの強化
    内部監査は組織が直面するリスクを特定し、適切な対策を講じることで、リスクマネジメントを強化します。不正や違法行為を予防し、事業に対するリスクを最小化します。
  3. 業務の改善と効率化
    内部監査は業務プロセスを客観的に評価し、改善の提案を行います。業務の効率化や生産性向上を図り、組織の業績向上に貢献します。
  4. 法令遵守の確認
    内部監査は法律や規制の遵守状況を確認し、法令順守を実現します。コンプライアンスの確保により、企業の信頼性と社会的責任を高めます。
  5. 内部情報の保護
    内部監査は企業の重要な情報や資産の保護を担当します。情報漏洩や不正アクセスなどから企業を守り、情報セキュリティを確保します。

内部監査は会社が任意に設置した内部監査人や内部監査部門が自主的に行うことが一般的です。組織の運営に対する客観的な評価と改善提案を通じて、企業の健全性と信頼性を高める役割を果たします。企業の成長と安定に貢献し、ステークホルダーの信頼を獲得するために欠かせないプロセスとなっています。

内部監査が求められる企業

金融商品取引法や会社法によって内部統制システムの構築が義務付けられている企業には、内部監査の実施が必要とされています。2006年の会社法改正により大企業において、同年の金融商品取引法成立により上場企業において、内部統制整備が義務化されました。対象となる企業では内部監査を実施することが必須となり、これらの法改正により企業の内部監査の重要性が高まりました。

内部監査の実施が必要な企業は以下の企業に該当します。

  • 取締役会設置会社
  • 大会社
    資本金が5億円以上、または負債総額が200億円以上の株式会社
  • 上場企業およびIPO準備企業

これらの企業は内部監査を行うことが法的要件とされており、組織の透明性と社会的な信用を高めるために内部監査を実施しています。

また、上記の条件に当てはまらなくても、企業自体の意思決定や経営の改善に向けて内部監査を導入する企業もあります。内部監査の目的と効果を考慮し、組織の特性に応じて内部監査の実施を判断しているのです。

会計監査 (外部監査) との違い

会計監査(外部監査)と内部監査の違いは以下の通りです。

  • 監査の実施者
    • 会計監査(外部監査):外部の専門家である公認会計士や監査法人が行います。
    • 内部監査:会社内部の監査役や社内担当者が行います。
  • 目的
    • 会計監査(外部監査):投資家保護や利害関係者の信頼性確保が主な目的です。財務諸表の内容に虚偽記載などがないかを確認し、企業の財務状況を適正に記載できているかをチェックします。
    • 内部監査:企業内部の業務改善や内部統制の強化、不正防止などが主な目的です。経営目標の達成や業務効率化を促進するために行われます。
  • 独立性
    • 会計監査(外部監査):外部の専門家による独立した立場で行われます。外部監査人は企業と独立しており、客観的な目で監査を行います。
    • 内部監査:会社内部のメンバーによって行われるため、組織内部とのつながりがあります。しかし、内部監査は客観性を保つために独立性を重視し、監査対象となる部門との間で組織的なつながりを避けるように努めます。
  • 監査範囲
    • 会計監査(外部監査):主に財務諸表や財務データを対象に監査を行います。
    • 内部監査:経営全体や業務プロセス、内部統制の有効性などを総合的に対象として監査を行います。
  • 監査結果の報告
    • 会計監査(外部監査):監査人が独立して財務諸表の内容などについて報告を行います。報告書は第三者に対して公開されることが一般的です。
    • 内部監査:会社内部に対して監査結果や改善策について報告を行います。報告は経営陣や関係者に対して行われ、外部への公開は必ずしも求められません。

これらの違いにより、会計監査(外部監査)と内部監査は異なる目的や範囲で行われ、企業の信頼性と経営の健全性を確保するために相補的に活用されています。

監査役監査との違い

監査役監査と内部監査の違いは以下の通りです。

  • 監査の実施者
    • 監査役監査:監査役監査は会社法に規定された監査役によって行われる監査です。監査役は株主から選任され、取締役の職務執行に対して監視する役割を担っています。
    • 内部監査:会社内部の監査役や社内担当者が行います。
  • 目的
    • 監査役監査:監査役監査の主な目的は、取締役の職務執行に対する違法性や不適切な行為を監視することです。法令や定款の遵守を確認し、会社の健全な経営を保障します。
    • 内部監査:企業内部の業務改善や内部統制の強化、不正防止などが主な目的です。経営目標の達成や業務効率化を促進するために行われます。
  • 独立性
    • 監査役監査:監査役は株主から選任される独立した立場で監査を行います。外部からの影響を受けず、客観的な判断が求められます。
    • 内部監査:会社内部のメンバーによって行われるため、組織内部とのつながりがあります。しかし、内部監査は客観性を保つために独立性を重視し、監査対象となる部門との間で組織的なつながりを避けるように努めます。
  • 監査範囲
    • 監査役監査:監査役監査は主に取締役の職務執行や法令遵守を対象に監査を行います。会社の運営や経営に関わる重要な事項を対象にします。
    • 内部監査:経営全体や業務プロセス、内部統制の有効性などを総合的に対象として監査を行います。
  • 監査結果の報告
    • 監査役監査:監査役は監査結果や違法性のある行為に対して報告書を作成し、取締役や株主に報告します。必要に応じて適切な措置を求めることがあります。
    • 内部監査:会社内部に対して監査結果や改善策について報告を行います。報告は経営陣や関係者に対して行われ、外部への公開は必ずしも求められません。

内部監査の種類

内部監査には以下のような種類があります。

  1. 部門監査
    各部署の規定や業務マニュアルが整備され、適切に運用されているかを評価します。監査を行うことで、整備された規定やマニュアルが適正に運用されていることを担保します。
  2. テーマ別監査
    特定の課題に焦点を当てて監査を行い、問題点を特定して改善策を提案します。例えば、セキュリティ対策や品質管理など、特定のテーマに対して重点的な監査を行います。
  3. 経営監査
    企業のリスクマネジメントやコーポレート・ガバナンスの実施状況などに関して、経営責任が果たされているかを評価し、改善提案を行います。経営全体の健全性を把握するための監査です。

これらの内部監査は、企業内のさまざまな領域を対象にして監査を行い、業務の適正性と企業の健全な経営を支える役割を果たしています。

内部監査の手順

内部監査の手順は以下のようになります。

  1. 監査計画の立案
    内部監査を実施するために、監査計画を立てます。監査計画では、監査を担当する人や実施日程、対象となる業務や部署を決定します。監査人は監査対象の部署とは独立した立場で選ばれることが重要です。
  2. 予備調査の実施
    監査対象部署に事前に監査があることを伝え、必要な情報を収集するための予備調査を行います。ただし、不正の調査などの場合は、事前通知を行わないこともあります。予備調査を通じて、監査対象業務の理解や必要な情報の把握を行い、本調査に備えます。
  3. 本調査の実施
    監査対象の部署を訪問し、監査計画に基づいて業務の適正性や不正の有無を確認します。この際には、社内規程やマニュアルの順守、リスク管理の適切性、業務プロセスの効率性などを評価します。また、部署の責任者や従業員に対してヒアリングを行うこともあります。
  4. 調査結果の評価・報告
    本調査の結果をまとめ、監査報告書を作成します。監査報告書には監査の目的、範囲、実施手順、調査結果、改善提案などが含まれます。報告書を通じて経営層や関係者に対して調査結果を明確に伝え、必要な対策を促します。
  5. 監査手続き後の改善
    監査の結果、問題点や改善が必要な項目が特定された場合、対象部署に改善提案を行います。必要に応じて取締役会や経営幹部にも報告し、企業全体の改善に取り組みます。また、後続のフォローアップを行い、改善策が適切に実行されているかを確認します。

内部監査は組織の健全性を確保し、リスク管理や業務プロセスの改善に貢献する重要なプロセスです。効果的な内部監査は企業の信頼性を高め、持続的な成長に寄与します。

まとめ

内部監査は企業経営において不可欠なプロセスであり、業務の適正性やリスク管理を客観的に評価し、組織の健全性を確保する役割があります。独立性を持ち、経営層に報告を行い、意思決定のサポートや業務改善に寄与します。

さまざまな目的や種類に応じて適切な監査が行われることで、企業の透明性と信頼性を高め、持続的な成長を支える役割を果たします。
内部監査は組織の健全性とリスク管理の確認に欠かせない手段であり、経営の健全な発展に貢献します。

カテゴリー
コラム
ページトップへ