【東陽監査法人様】ジーニアルAIは単なる証憑突合ツールにあらず。OCRやクリップ機能をフル活用した公認会計士による会計監査の効率化術

2025-09-03
2025-08-26

東陽監査法人は、準大手の一角として国際会計ネットワークCrowe Globalに加盟し、幅広い業界において高品質な監査業務を展開しています。2025年3月東陽監査法人では、Excelアドイン型の証憑突合システム「ジーニアルAI」を本格導入しました。

導入前に抱えていた課題、導入にあたって直面した障壁とその克服方法、そして導入後に得られた効果、さらに、このサービスをお勧めできる方とはーー。

監査DXを先導するデジタルサービス部 部長でシニアパートナーの大山昌一様と、法人内でジーニアルAI利用率トップを誇るシニアスタッフの横山滋様にその実体験を語っていただきました。

左から、東陽監査法人の大山昌一様、横山滋様
左から、東陽監査法人の大山昌一様、横山滋様

※ こちらの音声は、Google NotebookLM によって AI が生成したものです。そのため、発音や内容が正確でない場合があります。

自社開発・外部サービス導入を組み合わせ、監査DXに取り組む

― まずは東陽監査法人について教えてください。

大山:東陽監査法人は、1971年に設立以来、会計監査のプロフェッショナル集団としてクライアントとの密なコミュニケーションを重視、監査現場の声を大切にしながら、柔軟かつ迅速な対応により高品質な監査業務の提供に努めてまいりました。

2024年12月時点で、公認会計士193名と公認会計士試験合格者46名を含む、計340名が在籍しています。228社と監査契約をしており、その内上場会社は81社。

当法人は人材を人財として捉え、ひとりひとりが持っているチカラを組織力に変えるべく、『ヒトに寄り沿う』をモットーに、人材の育成と活躍を重視します。高品質な監査とワークライフバランスの両立を追求するとともに、ITの積極的な活用により監査業務の効率化と品質向上を実現しています。

東陽監査法人 デジタルサービス部 部長 シニアパートナー 公認会計士 大山昌一様
東陽監査法人 デジタルサービス部 部長 シニアパートナー 公認会計士 大山昌一様

─ 大山様はIT関連も担当されています。

大山:東陽監査法人では、マネージャー以上は必ず法人の間接業務に従事することになっており、私は監査業務に従事する傍らで法人の監査DXを主導しています。

社内で利用する監査ITツールの内、サンプリングツールやアサイン管理システム、工数集計ツールなど、自社開発したものも多くあります。ただ準大手監査法人である私たちは、大手監査法人ほどの開発力はないため、必要に応じて外部サービスも活用しています。Teamsに組み込まれている議事録機能なども、今では当たり前に使っていますね。

― 今後はどのようなITツールの利用を検討していますか?

大山:ChatGPTのような生成AIも、もちろん検討しています。最終的な責任は監査人が負いますが、例えば調書間の整合性確認やデータ加工など、周辺業務への活用可能性について検討しているところです。

左から、東陽監査法人の大山昌一様、横山滋様

フィードバックはすぐに反映。セキュリティも万全。ジーニアルAI導入の背景

― それではジーニアルAIについても聞かせてください。そもそも導入前には、どのような課題を抱えていたのでしょうか。

大山:コロナ禍を経て当法人の電子監査調書化が一気に進み、監査先から受領する資料も電子の割合が増えました。私はDX担当でもあるため、AIを活用して証憑突合をDXできないか、常に模索していました。そんな中で出会ったのがジーニアルAIです。

例えば、売上高の検証において200件の取引をピックアップした場合、それぞれの納品書、検収書、請求書を確認するとなると、延べ600回の証憑突合をしなければなりません。非常に重要な手続とはいえ、負荷が高いことも事実です。ジーニアルAIを利用すれば証憑突合を効率化できるのではないかと、導入の検討を開始しました。

ジーニアルAIのデモの様子
ジーニアルAIのデモの様子

大山:ただ、ジーニアルAIの初期コンセプトは「証憑突合の代行」だったのです。「代行」だと精度が人間以上にならない限り作業を任せられず、その時点では導入を見送りました。しかしその後「証憑突合の支援」にコンセプトを大きく変更しました。請求書番号の一致を確認したいときに、Excelと証憑PDFをハイライトするといった「支援」なら、最終判断するのは監査人のままです。このコンセプトであれば監査品質を維持しつつも証憑突合の負荷軽減につながると考え、改めて導入を検討。1年間の実証実験期間を経て、正式導入に至りました。

― 導入にあたり、セキュリティや操作性について懸念はありませんでしたか?

大山:実証実験期間中に現場から出た要望などを、随時ジーニアルテクノロジーに伝達し、対応方法についてディスカッションを重ねました。その中でも特に重要だったのが、やはりセキュリティ対応です。当法人として必要な要望をしっかりと伝え、結果的にSOC2 Type2(※)を取得いただき、心配なく正式導入できました。

それ以外にも細かなエラーはすぐに修正いただきましたし、カラーアクセシビリティの課題などにも真摯に対応していただきました。

(※)アウトソーシング事業者(受託会社)が委託されている業務の内、「Trustサービス規準」に基づき、「セキュリティ」「可用性」「処理のインテグリティ」「機密保持」「プライバシー」の中より受託会社が選択した規準に関連する内部統制の保証報告書。Type 2報告書は特定の対象期間を通じたデザイン及び運用状況の評価に関するもの。

― ジーニアルAI導入にあたって、他のツールは検討されましたか?

大山:当然、他社製品とも比較検討しました。その中で、ユーザーインターフェイスが日本語でありシンプルなことや、日本語でのサポート体制の充実が大きなポイントでした。

少なくとも日本の監査法人が国内で利用する場合には、ジーニアルAIは非常に優れていると感じています。製品のサービスレベルは当然として、課題解決のスピード力、サポート体制の充実、ユーザーの困りごとに親身に寄り添ってくれる体制が決め手となり、ジーニアルAIの導入を決定しました。

準大手・中小の監査法人ではITツールの自社開発に限界があります。そんな中、日本の企業が日本の監査法人の利便性向上のために製品を開発しようとしている、その姿勢にも感銘を受けました。

私は日本公認会計士協会の活動として、中小監査事務所のIT担当者をネットワーキングする業務も担当しています。その中で、ジーニアルAI含めて監査業務のDXに役立つツールなども積極的に紹介してきました。監査業界の活性化のためにはDXは不可欠であり、ジーニアルAIのような市販サービスの充実は非常に意義があると思っています。

【東陽監査法人様】ジーニアルAIは単なる証憑突合ツールにあらず。OCRやクリップ機能をフル活用した公認会計士による会計監査の効率化術

想像以上に便利な「クリップ機能」

― 実際にジーニアルAIを利用した感想を教えてください。

横山:私は以前、大手監査法人に勤めていました。その法人ではジーニアルAIの競合製品が導入されていて、日常的に利用していました。

その後、東陽監査法人に転職したものの、当時は同様の製品が導入されていなかったため、やむを得ず手作業で証憑突合などの手続を行っていました。

そんな折、東陽監査法人でジーニアルAIの導入が決まりました。実際に使ってみたら、必要な機能は十分にありましたし、日本語のインターフェースで使えるという点で利便性を高めてくれました。

東陽監査法人 監査第二部 公認会計士 横山滋様
東陽監査法人 監査第二部 公認会計士 横山滋様

横山:また私は不動産会社の会計監査をしている関係で、不動産鑑定評価書を大量に受領し、それに対して手続を実施する機会が多くあります。特に大変なのが、その中にあるキャッシュフロー表の手動での転記。しかしジーニアルAIを使えば自動でデータ化してくれるので、作業が非常に楽になり、無事に繁忙期を乗り越えられました。

大山:実際に使ってみて想像以上に便利だったのは、テキストクリップ機能とテーブルクリップ機能(※)です。OCRソフトとして、かなり精度が良いように感じています。

(※)クリップ機能:マウスで選択した範囲の文字や表をExcelのセルに転記する機能

― 大山様はシニアパートナーですが、パートナーレベルでもこの機能は利用するのでしょうか。

大山:例えば議事録レビューはマネージャーやパートナーが対応するケースも多いですよね。捺印された議事録の原本などをPDFで送付していただいた場合、そこから議事の概要やタイトル一覧などをExcel調書に転記する際に活用しています。

またこのクリップ機能は、監査の現場以外でも使う場面が度々あるんです。例えば先日、データ分析ツール開発のために専門書をPDFで閲覧していた際、その中にデータテーブル構造の一覧表がありました。それをExcelに転記してシミュレーションするために、テーブルクリップ機能を使ったりもしました。

テーブルクリップ機能は、議事録やプロフェッショナルレポートのレビューなど、幅広いシーンで利用できる機能で、非常に重宝しています。

横山:確かに、PDFから一つひとつ手作業で転記しているスタッフを見かけると「その作業はジーニアルAIでできると思うよ」と声をかけるようになりました。

大山:私は社内ではジーニアルAIを「証憑突合支援ツール」として紹介しましたが、実際にはクリップ機能など、OCRソフトとしての性格も強いですよね。だから監査以外でも利用できる場面は少なくありません。

先日は事務職員から、経費精算のための領収書とデータを突合するためにジーニアルAIを使ってよいかと尋ねられました。自由に使ってもらって問題ないのですが、監査の証憑突合支援ツールとして宣伝しすぎたなと少し反省しています(笑)。

横山:周囲で使っている方の評判は良いですね。「OCR機能が便利」との反応も多いです。

左から、東陽監査法人の大山昌一様、横山滋様

― 監査の効率化には寄与できていますでしょうか?

横山:あくまで個人的な感想ですが、私の業務は特にPDFを使う場面が多かったこともあり、直近の繁忙期は、ジーニアルAIがなければ2倍の時間がかかっていたかもしれません。

また監査の現場では、クライアントから受け取った資料のタイトルに番号が付いていないため、数十件のPDFを一つひとつ開いて、どれが該当する資料か確認しなければならず、非常に時間がかかってしまうことも珍しくありません。

しかしジーニアルAIならとりあえずPDFをアップしてしまえば、突合したい明細に対応したPDFの候補を示してくれます。この機能は業務効率に寄与してくれていると感じますね。

ジーニアルAIをオススメできるのはこんな方

― ジーニアルAIのサポート体制はいかがでしょうか?

大山:法人内でジーニアルAIについて不明点があれば、まず私の部署に問い合わせが来ることになっています。ただ、導入してから数ヵ月経ちますが、機能や使い方に関する問い合わせはほとんどありません。他のツールでは一定数の問い合わせがあるものですが、ジーニアルAIは少ないですね。

横山:もちろんマニュアルはありますが、操作がシンプルで余計な機能がなく、迷わないからだと思います。

― ジーニアルAIへの今後の期待を教えてください。

横山:単純作業の自動化がさらに進むと嬉しいです。開示情報のチェックや契約書のレビュー機能の開発にも期待しています。

大山:例えば、工事番号が請求書には記載されているものの納品書には無い場合には、他の突合キーを利用して「これが該当取引の納品書と推測されます」といったことができると助かります…と伝えていたら、ファイル名を使って突合する機能が実装されましたよね。現時点では無い機能であっても、フィードバックをすれば実装していただける可能性があり、この対応の柔軟さもジーニアルAIの素晴らしい点だと感じています。

また、ジーニアルAIの開示チェック機能の充実にも期待しています。実際、PDFのバージョン比較や差分をExcelに出力する機能などは精度が良く、2025年6月の有報チェックにおいて先行導入しました。他にも前期と当期の開示数値の整合性チェックや、当期の開示書類内の整合性チェック機能も本導入に向けて検証中です。

印刷会社などでも監査法人と連携して開示書類のDXに取り組む流れがありますが、開示書類は様式が決まっており、ジーニアルテクノロジーは日本の有価証券報告書や決算短信に優先的に対応して頂けるので、これらの流れと上手く合致すれば、証憑突合以上に成果が出やすい分野ではないかと期待しています。

また今後、取り込んだ証憑を生成AIで要約する機能の利用も検討しています。例えば、契約書がリース取引に該当するかを判断したり、IPO準備会社で求められる規定類が一式揃っているかの網羅性を検証してくれたり、規定間の不整合を調べたりなど、利用場面に応じた設定がある程度テンプレート化されていれば社内展開もしやすく、契約に向けてジーニアルテクノロジーに要望を出しているところです。

― 最後に、ジーニアルAIがどのような方にオススメできるか、教えてください。

横山:会計監査業務の中でも、単純な証憑突合やPDF資料の内容をExcelにまとめることに多くの時間を費やしている若手〜中堅スタッフは、特にメリットを享受できると思います。もちろん、大山が先述したように、パートナーやバックオフィスの方々にも役立つ場面は少なくないでしょう。

左から、東陽監査法人の大山昌一様、横山滋様

大山:繰り返しになりますが、当初はスタッフの証憑突合支援を目的にジーニアルAIを導入しました。しかし思いのほかOCRソフトとして優秀なので、例えば議事録レビューを行なうパートナー~マネージャー、事務職員による領収証のデータ化など、想定以上に幅広く活用できると感じています。

一方で、証憑というのは種類やフォーマットが多岐にわたり、突合ルール(突合キー)も会社により条件が異なるため、DX化という観点ではどうしても効果は限定的です。『ワンボタンで年間の証憑突合が完璧に終わる』というイメージを持つと、期待とのギャップが大きくなってしまうでしょう。

とはいえ、クリップなどの機能を上手く使えば、証憑突合以外の監査手続を効率化することは可能です。ジーニアルAIは会計監査を含めた、OCRが必要な場面で役立つサービスだと捉えて検討してみるといいのではないでしょうか。

― 横山様、大山様、本日はありがとうございました。

東陽監査法人(Crowe Toyo & Co.)
住所:東京都千代田区神田美土代町7番地 住友不動産神田ビル6F
創業:1971年
社員:340名
事業内容:財務書類の監査又は証明の業務、財務書類の調製、財務に関する調査若しくは立案、又は財務に関する相談の業務
URL:https://toyo-audit.jp/

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