建設業許可とは?種類や申請の流れ、注意事項をわかりやすく解説

2024-07-31
2024-07-31

建設業を営む上で必須なのが「建設業許可」です。建設を事業として営んでいくためには、必ず取得しなければなりません。
しかし「そもそも何なの?」「どんな種類があるの?」「取得には何が必要なの?」と疑問に思っている方も多くいます。一口に建設業許可と言っても、複数種類あることが難しさの一因です。
そこで今回は「建設業許可の基礎知識」を解説します。建設業許可を取得するために知っておきたい基本的な知識だけでなく、「建設業許可の種類」や「取得方法」も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

建設業許可とは

建設業許可とは

建設業許可とは、建設業を営むために取得する必要のある許可で、建設業法の第3条によって定められています。国土交通大臣または都道府県知事から与えられる許可であり、建設工事の安全確保と建設業者の適正な運営を目的としています。一部の例外を除いて、基本的にすべての建設会社に必要です。建設業を営もうとする場合は、必ず取得するようにしましょう。

建設業許可の要件

建設業許可の要件

建設業許可を取得するには、以下の要件を満たしておく必要があります。申請の際には、自社がこれらを満たしているかを確認しましょう。

経営業務の管理責任者を設置している

建設業を適正に経営するためには、経営業務の管理責任を担える人材が最低でも1人は必要です。建設業に関する知識と経験を持ち、経営業務を適切に管理する能力を持っていなければいけません。

要件は個人・法人によって以下のように異なります。

要件(いずれかに該当)要件(いずれかに該当)
法人常勤の役員1. 建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者であること
2. 建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る。)として経営業務を管理した経験を有する者であること
3. 建設業に関し6年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験を有する者であること
4. 建設業に関し、二年以上役員等としての経験を有し、かつ、五年以上役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位にある者(財務管理、労務管理又は業務運営の業務を担当するものに限る。)としての経験を有する者に加えて、常勤役員等を直接に補佐する者として、当該建設業者又は建設業を営む者において「財務管理の業務経験」、「労務管理の業務経験」、「運営業務の業務経験」について、5年以上の経験を有する者をそれぞれ置く(一人が複数の経験を兼ねることが可能)ものであること5.五年以上役員等としての経験を有し、かつ、建設業に関し、二年以上役員等としての経験を有する者に加えて、常勤役員等を直接に補佐する者として、当該建設業者又は建設業を営む者において「財務管理の業務経験」、「労務管理の業務経験」、「運営業務の業務経験」について、5年以上の経験を有する者をそれぞれ置く(一人が複数の経験を兼ねることが可能)ものであること
個人事業主本人
支配人登記した支配人
引用:国土交通省

申請の際には、該当するか否かが審査されます。そのため、許可を取得した後に経営業務の管理責任者が退職し、後任が不在となった場合は要件が欠如しているため、許可が取り消される可能性があります。人員の確保は非常に重要です。

専任技術者を設置している

建設工事を安全かつ確実に施工するために、専任技術者を設置していることも要件の1つです。専任技術者は営業所ごとに設置しなければならず、営業所に常勤している必要があります。
専任技術者の許可は一般建設業許可と特定建設業許可によって、以下のように要件が分かれています。

許可の種類要件(いずれかに該当)
一般建設業許可1. 定学科修了者で高卒後5年以上、もしくは大卒後3年以上の実務の経験を有する者
2. 指定学科修了者で専門学校卒業後5年以上実務の経験を有する者、または専門学校卒業後3年以上実務の経験を有する者で、専門士もしくは高度専門士を称する者
3. 許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関して、10年以上実務の経験を有する者 4.国家資格者 5.複数業種に係る実務経験を有する者
特定建設業許可1. 国家資格者
2. 指導監督的実務経験を有する者
3. 大臣特別認定者:建設省告示第128号(平成元年1月30日)の対象者
引用:国土交通省

経営業務の管理責任者と同様に、許可を取得した後に経営業務の管理責任者などが退職し、後任が不在となった場合は要件が欠如しているため、許可が取り消される可能性があります。

安定した財産を保有している

建設工事を請け負うためには、安定した財産を保有しているかどうかも必要です。工事の履行に必要な資金があるかを審査されます。財産基礎がしっかりしているかどうかも判断されます。

財産は一般建設業と特定建設業によって、以下のように分かれます。

許可の種類要件
一般建設業許可※いずれかに該当
1. 自己資本が500万円以上であること
2. 500万円以上の資金調達能力を有すること
3. 許可申請直前の過去5年間許可を受けて、継続して営業した実績を有すること
特定建設業許可※すべてに該当
1. 欠損の額が資本金の20%を超えていないこと
2. 流動比率が75%以上であること
3. 資本金の額が2,000万円以上であり、かつ自己資本の額が4,000万円以上であること

一般建設業許可と特定建設業許可とで要件が異なるため、注意しましょう。

誠実性がある

建設業許可を取得するには、誠実性が求められます。法令遵守や契約遵守を問われます。
対象となるのは、法人や個人、役員などさまざまです。過去に悪質な違反行為や税務上の滞納がないかどうかを細かくチェックされます。

欠格要件に該当していない

建設業許可を取得するためには、欠格要件に該当していないかどうかも審査されます。以下のいずれかに該当する場合、許可されません。

  • 破産者で復権を得ない者
  • 一般建設業許可または特定建設業許可が取り消され、取り消し日から5年経過していない者
  • 営業停止処分の期間が経過していない者
  • 禁固刑以上の刑に処せられ、執行が終わってから5年経過していない者
  • 暴力団員または暴力団員でなくなった日から5年経過していない者
  • 精神機能の障害により適切な認知や判断、意思疎通ができない者

他にも細かく決められているので、国土交通省のページを参照してください。

建設業許可の種類

建設業許可の種類

一口に建設業許可といってもさまざまです。どのようなものがあるのか、以下に分けて詳しく見ていきましょう。

許可行政庁(大臣許可と知事許可)

建設業許可は、誰が許可を出すのかで以下の2種類に分けられます。

  • 知事許可:1つの都道府県に営業所を設けている場合
  • 大臣許可:2ヶ所以上の都道府県に営業所を設ける場合

営業所の所在地で判断されます。自社の営業所の構成を事前に確認しておくことが重要です。

業種

建設業許可は請け負う工事の種類によって、27の業種に分類されます。一式工事、専門工事として、以下のように分けられています。

一式工事(全2種)・土木一式工事
・建築一式工事
専門工事・大工工事・左官工事・とび・土工・コンクリート工事・石工事・屋根工事・電気工・管工事・タイル・れんが・ブロック工事・鋼構造物工事・鉄筋工事・舗装工事・しゅんせつ工事・板金工事・ガラス工事・塗装工事・防水工事・内装仕上工事・機械器具設置工事・熱絶縁工事・電気通信工事・造園・さく井工事・建具工事・水道施設工・消防施設工事・清掃施設工事・解体工事
引用:国土交通省

許可申請時には、請け負う工事の種類に該当する業種を選択する必要があります。一式工事の許可を持っていても、個別に消防施設工事などを行う場合は、別途許可を取得する必要があります。

区分(一般建設業と特定建設業)

建設業許可は下請契約の規模などによって、一般建設業と特定建設業に区分されます。

  • 特定建設業:元請会社として工事を請け負い、4,500万円(建築一式工事は7,000万円)以上の工事を下請けに依頼する場合
  • 一般建設業:上記に該当しない場合

下請契約の規模によって、許可申請に必要な要件や手続きが異なるため、事前に確認しておくことが重要です。

元請会社が下請け会社に依頼しない場合は、金額に関係なく一般建設業に該当します。

建設業許可が不要なケース

すべての建設会社に建設業許可が必要ですが、一部例外があります。軽微な建設工事のみを行う場合に該当します。以下の条件を確認しましょう。

  • 建築一式工事以外の工事で、1件の請負代金の額が500万円未満の場合
  • 建築一式工事で、請負代金の額が1,500万円未満、もしくは延べ面積が150平方メートル未満の木造住宅の工事

建築業許可を取得せずに上記に該当しない仕事を請け負った場合、建設業法違反となり罰則が科せられることに注意してください。

建設業許可の申請の流れ

建設業許可の申請の流れ

建設業許可を取得する際は、以下の流れに従って進めてください。

Step1.要件を確認する

建設業許可の要件を満たしているかどうかを確認します。上記の通り、以下の要件が含まれます。

  • 経営業務の管理責任者を設置している
  • 専任技術者を設置している
  • 安定した財産を保有している
  • 誠実性がある
  • 欠格要件に該当しない

審査の際に必ずチェックされるので、細かい部分まで確認しましょう。

Step2.許可申請書と添付書類を作成する

要件を満たしていることが確認できたら、許可申請書と添付書類を作成します。許可申請書は許可行政庁のホームページからダウンロードできます。

添付書類には法人と個人で提出内容が異なる内容がありますので、国土交通省のホームページを参照しながら準備しましょう。詳細は、以下のページから確認してください。

国土交通省【許可申請に必要となる書類の一覧】〈令和4年3月31日より適用〉

Step3.予備審査を受けて申請書を提出する

許可申請書と添付書類を作成できたら、許可行政庁の建設業課の相談窓口へ提出します。提出場所は以下のように異なります。

  • 大臣許可:国土交通省の各地方整備局長
  • 知事許可:各都道府県知事

応募先については、国土交通省の「許可行政庁一覧表」を参考にしてください。

多くの許可行政庁では、その場で予備審査が行われ、問題がなければ正式に申請書を提出します。手数料も必要ですので、事前に費用を確認しておくと良いでしょう。本審査に合格すれば、建設業許可が交付されます。

建設業許可の取得時に注意すべきポイント

建設業許可の取得時に注意すべきポイント

建設業許可を取得する際には、以下のポイントに注意しましょう。

余裕を持ったスケジュールで進める

建設業許可の申請には数ヶ月かかる場合もあります。有効期限を考慮して、余裕を持ったスケジュールで進めましょう。
建築業許可は許可日から5年間が有効期間です。期間満了後も引き続き建築業を営む場合、有効期限が満了となる30日前までに更新許可を提出する必要があります。
もし、有効期限が過ぎてしまうと許可が失効し業務ができなくなってしまいます。

添付書類の内容に問題がないかをチェックする

許可申請には多くの添付書類が必要です。申請時に不備があると却下される可能性があるため、内容に問題がないかをくまなくチェックしましょう。
ミスによって再提出になると、有効期限に間に合わない可能性があるため、添付書類の内容には注意を払いましょう。

会社の定款に記載されている業種をチェックする

建設業許可を取得するには、会社の定款に記載されている業種と申請する業種が一致している必要があります。
定款に記載されている業種と申請する業種が一致していない場合は、定款の変更も視野に入れましょう。定款の変更には数ヶ月かかる場合もあるため、早めに手続きを進めるようにしましょう。

まとめ

まとめ

建設業許可は、建設業を営むのなら必要になる許可です。個人・法人を問わず、必ず取得しておきましょう。
建設業許可を取得する際には、いくつかのポイントに注意する必要があります。以下のポイントを押さえて、スムーズに申請手続きを進めましょう。

  1. 余裕を持ったスケジュールで進める
    • 建設業許可の申請には時間がかかることがあります。有効期限を考慮して、早めに手続きを始めましょう。
    • 有効期限が近づいたら更新許可の手続きも忘れずに行いましょう。
  2. 添付書類の内容に注意する
    • 許可申請には多くの添付書類が必要です。内容に問題がないかを確認し、不備がないようにしましょう。
    • ミスによって再提出が必要になると、有効期限に間に合わない可能性があるため注意が必要です。
  3. 会社の定款に記載されている業種を確認する
    • 定款に記載されている業種と申請する業種が一致しているかを確認しましょう。
    • 一致しない場合は、定款の変更も検討する必要があります。

建設業許可の取得は重要なステップですので、慎重に進めてください。

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