電子化とは-書類を電子化するメリットや方法についても解説します
「電子化とは何か?」と考えたことはありませんか。なんとなく意味は知っているものの、いざ説明を求められると、答えられる人は少ないかもしれません。
企業取引のデジタル化が一気に加速した昨今、電子申請や電子決済などさまざまな媒体も電子化を遂げています。聞き馴染みのある「電子化」という言葉ですが、本来はどのような意味を持っているのでしょうか?また、メリットや導入方法、今後の課題なども合わせて解説します。
電子化とは
電子化とは、紙ベースの書類をデジタルデータへと変換することをいいます。「ペーパーレス化」の方が聞き慣れているかもしれません。身近なところでは、電子決済や請求書のPDF化、ライブチケットのQRコード化などが挙げられます。
また企業においても、紙媒体を使用せず電子化することで、資源の節約になるだけでなく、業務を効率的に進める上でも大きなメリットが得られます。目視で確認する手間が省け、ミスを抑えられるなどの利点があります。さらに、企業間取引でも電子化が加速しているため、ますます必要となるでしょう。
電子化とデジタル化の違いは?
電子化とよく似た言葉に「デジタル化」があります。デジタル化とは、業務プロセスまでをデジタルを用いて効率化することです。例えば、会議室の予約についてデジタル化した場合を以下にまとめました。
現 状 | デジタル化 | |
---|---|---|
会議室の利用状況 | 1枚の一覧表用紙に利用者がそれぞれ利用時間を記入 | クラウド上にある一覧表にそれぞれがアクセスして利用時間を入力 |
一覧表の保管場所 | 総務課など決められた場所 (総務課まで行って記入) | クラウド上 (インターネット環境があればどこからでもアクセス可) |
閲覧状況 | 記入に行って他と被っていれば再検討 | 日程を調整しながら、会議室の空き状況を確認できる |
会議室の利用予約をデジタル化する場合、用紙をクラウド上にアップロードすることを電子化と言います。このように、電子化はデジタル化の一部と捉えると理解しやすいでしょう。
電子化の進展と現状
現在の電子化がどのように進み、現在どんな状態にあるのかを詳しく見ていきます。
電子化が進んだ理由とは
昨今の企業における電子化の急速な拡大は、新型コロナウイルス感染症の蔓延でテレワークが広まったことに関係すると考えられます。
従来の社内での働き方とは異なり、テレワークでは、それぞれの場所で仕事を行うため、非接触型・非対面型のコミュニケーションを利用する方が効率的です。
例えば、1枚の用紙を全員で共有していた以前とは異なり、テレワークでは全員がその用紙を確認することが難しくなります。
そこで用紙書式をPDF化してインターネット上にアップロードすることで効率化が進みます。このような流れから、デジタル化が進むと同時に電子化も急速に進んでいると考えられます。
電子化の現状
「電子帳簿保存法」(1998年7月施行)や「e-文書法」(2005年4月施行)などの法整備によって少しずつ進められていた電子化ですが、働き方改革や新型コロナウイルス感染症拡大のあおりを受けて大きな注目を集めることになりました。今までは導入予定がなかった企業も、やらざるを得ない状況となったことをきっかけに急速に拡大し、それがようやく受け入れられ、周知されて、さらに広がりを見せています。
電子化が進まない企業の原因とは
世界水準でみると、日本の電子化・デジタル化は大きく遅れを取っているといわれています。
会社数の大半を中小企業が占めている日本にとって、電子化が進まない原因は
- 体質の古さ
- 制約の多さ
- 変化に対応する力不足
などがあげられます。
また、世界的にも称賛される日本の「ものづくりの現場」において、ベテランが織りなす匠な技術や技能は、デジタル化できないものの代表例といっても過言ではないでしょう。
書類を電子化するメリットとデメリット
書類を電子化するメリット
必要に迫られ急速に広まった電子化ですが、多くのメリットも存在します。そのメリットについて解説していきます。
1.経費の削減
書類を電子化することで経費を削減することができます。紙代・印刷コスト等、1枚当たりの単価は2〜5円程度としても、10人が平日に平均30枚印刷すれば月12,000円~30,000円の費用がかかってしまいます。
また、書類を電子化することで保管場所も不要になるため、オフィス家賃の節約にも繋がります。
2.業務の効率化
書類の電子化は、業務の効率化に大きく貢献します。
ワークフローを電子化することとで、経費精算や受発注などの業務そのものを効率化出来るだけでなく、紙の伝票を発行する手間やミスを減らすことも可能になります。
2.検索性の向上
書類の電子化は、検索性の向上にも繋がります。書類を目視で探し出す手間を、電子化することでファイルサーバーやクラウドストレージなどの検索機能を利用することで、簡単に書類を見つけることが可能になります。
3.セキュリティ対策
紙の書類は紛失や破損などの安全性のリスクがありますが、電子化することでバックアップが可能になり、アクセス権限を設定することもできます。また、ログを管理することでセキュリティ効果をより高めることも可能です。
ログを使った監査については、次の記事に詳しくまとめています。
書類を電子化するデメリットとその対策
業務をデジタル化することで、電子化が進み業務効率が上がることがわかりました。
ところが、メリットを知りながら、デジタル化に踏み込めない企業も数多く存在します。
ここでは電子化のデメリットと今後の対策について解説します。
1.スキルを有した人材の不足
IT分野の会社でない限り、社内にITリテラシーやDXリテラシーを持った人材がいない傾向があります。
そのため、日々のちょっとした疑問や質問を解決するすべがなく、突発的なトラブルに充分に対応する力が不足するため、デジタル化を躊躇する傾向にあると考えられます。
したがって、人材の育成が求められます。
2.オペレーションの変化
電子化を進める場合、業務のオペレーションは変化するでしょう。この変化に難色を示す従業員も少なくありません。
電子化する目標や意義を明確にしたうえで、ワークフローをきちんと整えることで理解を得るなどの対策が必要です。
3.システム障害のリスク
今まで紙で行っていた業務が、電子化によってデータをファイルサーバーやハードディスク等に保存し、パソコンなどを使って取り出すことになります。
これらの機器に障害が発生する可能性があります。小さなトラブルだけでなく、機器やクラウドに障害が発生した場合、業務が停止してしまう可能性も考慮する必要があります。
4.システム導入のコスト
電子化する際、スキャナーなどの機器の購入やクラウドサービスとの契約などのコストが発生するため、躊躇する企業も少なくないようです。
ただし、電子化した際のコスト削減や費用対効果などを算出しておけば、不安も解消されるでしょう。
電子化する方法
電子化するには計画的に効率よく作業を進めることが大切です。そのための工程やポイントについて解説します。
1. 電子化の目的を明確にする
書類の電子化にあたっては、事前に目的と目標を設定して「なぜ電子化するのか」を周知して意識の統一を計ります。
2.電子化する書類を特定する
全ての書類を一気に電子化する必要はありません。
部門ごとに、どの書類を電子化するとどのように効率化出来るのかを検証・選別し、優先順位をつけることでスムーズに電子化を進めることが可能です。
その際、電子化によるコスト削減や業務効率化を見込み、電子化のしやすさなど複数の観点から書類を選定すると良いでしょう。
3.電子化したデータの保管や運用のルールを決める
電子化したデータの保管場所を決めます。その際以下のルールを定めておきましょう。
- ファイル名・フォルダー名のルール
- アクセス権限
- 保管期間
ファイルサーバーには上限があるため、決められたルールに従って保存します。
尚、一定期間の保管が義務付けられている書類もあるため、合わせて確認が必要です。
4.電子化する方法を決める
電子化するには、自社でおこなうか、委託するか、システムを導入するかなど、いくつかの方法があります。
電子化による費用対効果や業務負荷を比較しながら、自社にあった方法を選ぶことが重要です。
まとめ
電子化はデジタル化の一部で、紙ベースの書類をデータ化することをいいます。
働き方改革や新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて、急速に広がった電子化ですが、業務の効率化を計れるなどのメリットが多い反面、デメリットも存在します。
作業を効率化するために電子化は必要不可欠ですが、デメリットについての課題を把握しながら、うまく取り入れられるよう前向きに検討したいものです。