フラッシュフィル徹底解説|抽出・結合・自動変換の実務活用例

2025-10-19
2025-10-20
フラッシュフィル徹底解説|抽出・結合・自動変換の実務活用例

経理業務では、請求書の整理や支払明細の入力、売上・経費の集計など、日々膨大なデータをExcelで処理する作業が欠かせません。
同じパターンで文字列を分割・結合する単純作業も多く、わずかな手間でも積み重なれば大きな負担となります。効率化を求める担当者にとって、作業の自動化は大きな課題です。
Excelの「フラッシュフィル」は、入力の規則性を学習して同じパターンを一括処理できる機能です。手作業による入力作業を自動化し、省力化を実現します。
本記事では、フラッシュフィルの仕組みと具体的な活用法を解説します。

フラッシュフィルとは

フラッシュフィルとは

フラッシュフィルは、Excelでの入力作業を自動化し、手作業によるミスや時間の浪費を減らす機能です。少量のサンプル入力から規則性を認識し、残りのデータを自動で整形します。

フラッシュフィルの役割

フラッシュフィルは、Excel 2013以降に搭載された入力支援機能です。
たとえば「山田太郎」という氏名を「山田」と「太郎」に分けたい場合、最初の1〜2セルの入力例からパターンを認識し、残りを自動で整形します。
関数や数式を使わず、直感的に操作できる点が最大の特徴です。

オートフィルとの違い

フラッシュフィルは「オートフィル」と混同されやすいものの、その仕組みと目的は異なります。

  • オートフィル:既存のパターンを延長して入力を補う機能。「1、 2、 3…」や「月、 火、 水…」といった連続データの入力に向いています。
  • フラッシュフィル:パターンを認識し、文字列の分割・結合・変換といった構造的な処理を自動化。データの形そのものを変える柔軟な機能です。

フラッシュフィルの主な機能

フラッシュフィルの主な機能

得意とする処理は、大きく「抽出」「結合」「自動変換」の3つに分けられます。

1. データの抽出

入力データの中から特定の部分を切り出す機能です。
たとえば、住所から都道府県名だけを抜き出したり、メールアドレスからユーザー名を抽出したりする場合に活用できます。

2. データの結合

複数のセルに分かれている要素を1つにまとめる機能です。
姓と名を結合してフルネームにしたり、部署名と社員番号を組み合わせてIDを生成したりするなど、事務データで頻出する作業を簡単に実行できます。

3. データの自動変換

文字列の形式を統一したり、特定の書式を付与したりする機能です。
たとえば、郵便番号にハイフンを追加したり、英字の大文字・小文字を統一したり、数値に単位を付与したりすることができます。

フラッシュフィルの手順

フラッシュフィルの手順

フラッシュフィルの操作には、主に次の2通りの方法があります。

  1. [データ]タブから「フラッシュフィル」を使う方法
  2. Ctrl + E のショートカットを使う方法

順に解説します。

1. [データ]タブから「フラッシュフィル」を使う方法

1. 変換したいデータの隣の列に、希望する出力例を1セル分入力します。

1.[データ]タブから「フラッシュフィル」を使う方法

2. 出力例を入力したセルにカーソルを合わせます。

1.[データ]タブから「フラッシュフィル」を使う方法

3. Excelの「データ」タブを開き、「フラッシュ フィル」ボタンをクリックします。

1.[データ]タブから「フラッシュフィル」を使う方法

4. Excelがパターンを認識し、残りのセルが自動的に補完されます。

1.[データ]タブから「フラッシュフィル」を使う方法

2. Ctrl + E のショートカットを使う方法

1. 例示を入力したセルを基準に、次のセルを選択します。

2.Ctrl + E のショートカットを使う方法

2. キーボードで Ctrl + E を押します。

2.Ctrl + E のショートカットを使う方法

3. Excelが同様の処理を自動で行い、残りのセルを補完します。

2. Ctrl + E のショートカットを使う方法

慣れると、ショートカットの方が圧倒的に効率的です。

フラッシュフィル(抽出)活用例

フラッシュフィル(抽出)活用例

例1)氏名を「姓」と「名」に分割する

名簿データでよくあるのが、1セルに入力された氏名を分割したいケースです。
「山田太郎」「鈴木花子」といったデータを「姓」「名」に分けたい場合は、次の手順で処理します。

1. 隣の列に「山田」、次の列に「太郎」と入力します。

例1)氏名を「姓」と「名」に分割する

2. それぞれの列で Ctrl + E を押すと、自動的に同じパターンで分割されます。

例1)氏名を「姓」と「名」に分割する

例2)メールアドレスからユーザー名・ドメインを抽出する

メールアドレスが「taro@example.com」と1つのセルに入力されている場合、ユーザー名「taro」だけ、またはドメイン「example.com」だけを取り出したいことがあります。

1. ユーザー名に「taro」と入力し、Ctrl + Eを押すと、 @より前を抽出

例2)メールアドレスからユーザー名・ドメインを抽出する

2. ドメインに「example.com」と入力し、Ctrl + Eを押すと、 @より後を抽出

例2)メールアドレスからユーザー名・ドメインを抽出する

3. Excelが「@」を境に自動で文字列を分離してくれます。

例2)メールアドレスからユーザー名・ドメインを抽出する

例3)住所から都道府県名だけを抽出する

1. 住所が「東京都港区芝公園」などの場合、最初の数文字を例示すれば都道府県名だけを抜き出せます。

例3)住所から都道府県名だけを抽出する

2. Excelは「都・道・府・県」で終わる文字列を自動で識別するため、複数の住所データでも精度よく抽出されます。

例3)住所から都道府県名だけを抽出する

フラッシュフィル(結合)活用例

フラッシュフィル(結合)活用例

例1)「姓」と「名」を結合してフルネームにする

分かれている「姓」「名」を結合して、「姓 名」の形式に整えたい場合にもフラッシュフィルが使えます。

1. 最初のセルに「佐々木 翔」と入力し、Ctrl+E を押します。

例1)「姓」と「名」を結合してフルネームにする

2. 残りの行も自動的に同じフォーマットに変換されます。

例1)「姓」と「名」を結合してフルネームにする

例2)部署名と社員番号を結合してIDを作成する

社員番号の整理で有効なのが、部署名と番号を結合してIDを作成する方法です。

1. 「営業」「001」から「営業-001」を作成する例を入力し、Ctrl+E を押します。

例2)部署名と社員番号を結合してIDを作成する

2. Excelが全行に同じルールを自動で適用します。

例2)部署名と社員番号を結合してIDを作成する

関数でいう「CONCATENATE」や「&」演算子を使う必要がなく、より簡潔に処理できます。

フラッシュフィル(自動変換)活用例

フラッシュフィル(自動変換)活用例

例1)郵便番号にハイフンを追加する

1. 郵便番号の「1234567」を「〒123-4567」に変換する場合、1例を入力してCtrl + Eを押すだけで全件変換されます。

例1)郵便番号にハイフンを追加する

2. 桁数が一定であれば、Excelが自動的に区切り位置を推定します。

例1)郵便番号にハイフンを追加する

例2)英字の大文字・小文字を統一する

1. 「abcDEf」や「xyz」といった混在データも、最初のセルで目的の形式(小文字または大文字)を示せば、残りを自動で統一できます。

例2)英字の大文字・小文字を統一する

2. 社内コードやメールアドレスの整理時に便利です。

例2)英字の大文字・小文字を統一する

例3)単位を追加する(100 → 100円、50 → 50kg)

1. 数値だけのデータに単位を付ける場合も、例示するだけで自動処理できます。

例3)単位を追加する(100 → 100円、50 → 50kg)

2. 一律の単位追加はもちろん、列によって異なる単位にも対応可能です。

例3)単位を追加する(100 → 100円、50 → 50kg)

まとめ

フラッシュフィルは、日々のExcel作業における「小さな定型作業」を一瞬で処理できる自動化ツールです。
関数を覚える必要もなく、数セルの例示だけで変換・結合・整形が完了します。
経理業務では、データの正確性を保ちながらスピードも求められます。フラッシュフィルを活用すれば、定型処理の時間を削減し、分析や検証といった付加価値の高い業務に集中できるでしょう。
ただし万能ではなく、例外を含むデータや不規則な入力では誤認識が起こることもあります。
まずは少量のデータで試し、結果を確認したうえで全体に適用するのが基本です。
フラッシュフィルを正しく使えば、「人の作業感覚に近い自動処理」として、Excel業務の効率を飛躍的に高める強力な味方となるはずです。

カテゴリー
コラム
タグ
ページトップへ