注文書(発注書)とは?その目的や注意点、書き方について
注文書(発注書)は、ビジネスにおいて非常に重要な文書であり、商品やサービスの購入に関する合意を確立し、ビジネス取引を円滑に進めるための不可欠なツールです。この記事では、注文書の作成方法や発注業務の流れ、事務処理の方法について解説します。
注文書(発注書)とは
注文書は、相手に対して商品やサービスなどを「発注します」という意思を示すために発行するものです。注文書を発行することで、発注に関する様々なトラブルを防ぐことが期待できます。
発注書の目的は、社内処理を円滑にすることや発注者が商品やサービスなどを発注する際に、申込の意思表示を行うことにあります。また、法的な義務はありませんが、トラブルを未然に防ぐことも目的となります。
注文書の役割
注文書には様々な役割がありますが、ここでは、2つの役割について解説します。
- 認識のズレを防ぐ
発注書は、取引の内容などを目に見える形で残すことができます。そのため、発注者と受注者の間での認識がズレることを防げます。注文書には、商品やサービスの内容や数量、納品日などの共通認識を書面にするため、認識の違いは発注や納品のミスにつながります。 - 双方の安心につながる
取引は、大企業間による巨大なサプライチェーンだけではありません。中小企業や個人事業主とのやり取りが発生することもあります。そのため、注文書を発行することによって「発注を確約する」ことになり、双方の安心につながります。
注文書と発注書の違い
注文書と発注書は、法的な違いはありません。企業で使われる帳票には両方が存在していますが、それぞれ目的によって使い分けられることがあります。
例えば、発注する商品に加工が必要かどうかは大きなポイントです。現場によっては、原材料など形があるものを購入するときには注文書、その原材料を加工する工程が含まれる場合には発注書を使うことがあります。また、金額の大きさによって分けられるケースもあるため、自社のルールによって使い分けられるようにしておきましょう。
発注業務の流れ
ここからは、発注業務の流れを解説します。発注業務は、大きく4つの流れがありますが、今回は「見積もり」から「支払処理」までを一つずつ見ていきましょう。
1.見積もり依頼・見積書発行
まず、発注者は商品やサービスを依頼する前に見積もりを出してもらいます。見積もり書を発行する前には、内容や数量、金額や納品日などを双方で相談し、合意しておく必要があります。その後、合意した内容をもとに見積書が発行されるのです。見積書を発行したら、その内容を変更できないようなパターンもありますので、注意が必要です。
2.発注依頼
見積書の内容に合意し正式に発注することが決まったら、注文書(発注書)を発行します。発注書には見積書と同じ内容を記載しなければなりませんが、場合によっては受注締切日と異なる項目が出てくる可能性がありますので、締切日や発注漏れなどのトラブルがないよう事前に双方で確認しておきましょう。
3.検品
発注書をもとに実際に商品やサービスが納品されたら、検品を行います。商品やサービスの仕上がりに問題がないか、破損や不良といった不備がないか、見積書や注文書の内容と相違がないか等を調べ、不備が見つかった場合には対応に時間がかかることがあるため、早めに受注者に連絡します。
4.支払処理
発注書通りに納品され、検品しても問題なければ支払処理を行います。その際には請求書が発行されますが、その内容についても発注書などの数字と違いがないかを確認し、迅速に払うようにしましょう。
注文書(発注書)の作成方法
注文書は、定められた形式やフォーマットがありません。ただし、「下請法」に該当する場合には規定されているものがあるため、必要に応じたルールは確認しておくようにしましょう。ここでは、一般的な記載方法や変更・訂正の方法、注文書の発送方法などを解説します。
注文書(発注書)の記載方法
一般的な注文書は、次の内容を記載します。
- タイトル
- 発注先の宛名
- 発注番号・発注日
- 件名
- 発注元情報
- 納期・支払情報・発注書の有効期限
- 発注金額
- 内容(詳細)
- 小計・消費税・合計
- 備考欄
上記の内容については、自社の状況等に合わせて柔軟にアレンジしましょう。ただし、「下請法」などに関わる業態については発注書の項目が定められていることがありますので、注意しましょう。
下請法とは、「下請代金支払遅延等防止法」の略称です。独占禁止法を補完する役割があり、下請事業者に対する親業者の不当な取り扱いを規制します。下請法に反すると、公正取引委員会から勧告や公表(事業者名、違反事実の概要、勧告の概要など)が行われる可能性があるほか、罰金が科せられることもあります。
注文書(発注書)の変更・訂正方法
発注書は、数量や納期などの記載が変更になったりミスが発覚したりすることで、修正しなければならないケースがあります。こういった場合には、基本的には注文書を再発行し、取引先に古いものを破棄してもらうことで、最新の書類を共有するようにしましょう。なお、その際には「発注番号」を共有することを忘れないようしてください。また、どうしても発行済みの注文書を訂正しなければならない場合には、訂正箇所に二重線を引いてその上に訂正印を押すことで手続きを行います。
注文書(発注書)の発送方法
注文書の発送は、郵送、FAX、メールなどの方法があります。送付方法は、お互いが共通認識を持っておくようにしましょう。
注文書(発注書)のテンプレート
- ビジネステンプレート
こちらでは、エクセルデータによるテンプレートがダウンロードできます。 - ビズ研
自社の状況に合わせて、最適な状態で使える注文書(発注書)がダウンロードできます。
注文書(発注書)における注意点
発注書を発行した際には、次のことに注意する必要があります。
注文書(発注書)と見積書の照合
発注書は、受注者から送られてきた見積書と内容が変わらないか必ず確認しましょう。見積書と異なると「どちらが正しいのか?」というトラブルが起こってしまう可能性がありますので、見積書をしっかりと確認した上で発行しなければなりません。
発注書の保管時の注意点
発注書は税法によって定められた期間の保管が義務付けられています。
注文書(発注書)の保存義務
注文書の保管は、受注側、発注側ともに税法上7年間と定められています。また、欠損金の繰越控除を適用する場合には10年間の保存が必要です。なお、保存期間は発行日(注文日)ではなく、事業年度の確定申告提出期限の“翌日”から起算します。起算のタイミングは特に注意しましょう。
電子データでの保存
発注書は、手書きやPCで打ち込んでいるとどうしても人の手によるミスが起こります。また、企業によっては毎月莫大な枚数の処理をしなければならないため、電子データによる保存や管理がオススメです。さらに、電子データによって保存することで経年劣化や紙の破損、紛失を防ぐことも期待できます。
現在、発注書をデータでやり取りする方法は「電子帳簿保存法」によって定められており、保存などについては前述したとおりの保存期間が決められています。
莫大な処理をミスなく行うことを目指しましょう
今回は、注文書(発注書)に関して解説しました。発注書は、記載内容さえ間違えなければ書式は自由です。しかし、下請法や税法上の保存期間などに注意して、取り扱うようにしましょう。ぜひ、本記事の内容を今後の業務の参考にしてみてください。