領収書とは-役割・取扱い時の注意点・保管方法を解説
領収書とは、商品やサービスにおいて、金銭の授受を明確にするために欠かせない書類です。本記事では、領収書に関する基本的な知識から領収[証]やレシートとの違い、取扱時の注意点、そして保管方法について解説します。どのように領収書を管理すればいいのかお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
領収書の役割
領収書は、商品やサービスに対してお金の授受を証明する書類です。領収書を発行する側と受け取る側の双方にとって大切な書類です。
領収書には、以下のような役割があります。
- 二重請求や過払いを防止できる
- 経費として計上したり、確定申告の際の証憑書類として利用したりできる
- 内部不正を防止することができる
「領収書」と似た言葉に「領収証」や「レシート」がありますが、それぞれには違いがあります。
ここからは、それぞれの違いについて解説します。
領収書と領収証の違い
領収書と領収証は、取引において金銭の授受を証明する書類です。領収書は金銭授受の「書類」としての意味合いがあり、領収証は「証券」としての意味合いがあります。どちらも取引に関する証憑資料であり、重要な役割を担います。領収書は金銭授受の証明をする書類で、宛名が記載されてなくても取り扱いが可能です。一方、領収証は通常、宛名が記載されていて、誰が誰に現金を支払ったかが証明できます。
官公庁や金融機関が発行する場合は、領収証となります。
国税庁においては、「領収書」は、「領収証」や「レシート」、「預り書」の総称として使われます。
現金の授受が5万円以上の場合、領収書や領収証には収入印紙を貼付する必要があります。
また、金額によって貼付する収入印紙の金額が異なるため、注意が必要です。
領収書とレシートの違い
領収書とレシートは、どちらも金銭のやりとりを証明する書類ですが、記載内容や証明力に違いがあります。
具体的には、以下の4点が挙げられます。
- 宛名の有無
- 社名の印鑑の有無
- 手書きでの記載の有無
- 必要に応じて作成されるかどうか
領収書とレシートとの第一の相違点は、宛名の有無です。レシートには「購入日」「店名」「品目」「商品単価」「取引内容」などが印字されていますが、宛名は記載されていません。一方、領収書にはこれらの記載事項に加えて、受取人(発行者)の氏名(社名)および印鑑が押されることが一般的です。そのため、領収書はレシートよりも信用性が高く、ビジネス上重要な取引の際には領収書を求めることが多いです。また、レシートは機械で発行されることが多く、手書きでの記載はありません。一方、領収書は必要に応じて作成されます。
領収書もレシートも、経費の計上に使用可能です。しかし、領収書の方が信用度の高い書類として考えられています。
領収書を扱う際の注意点
領収書を扱う際の注意点として、どのような点があるのでしょうか。発行する側、受け取る側、双方の立場になって考えてみましょう。
発行する側の注意点
領収書を発行する側には、以下の3つの注意点があります。
- 必須項目を正しく記載すること
民法によれば、「弁済をする者は、弁済と引換えに、弁済を受領する者に対して受取証書の交付を請求できる」と定められています。
つまり、領収書を求められた場合は、拒否することはできません。正しく必須項目を記載するようにしましょう。 - クレジットカード決済の場合は、領収書の発行義務は不要
クレジットカードで決済された場合、通常、領収書の発行義務はありません。これは、売買時点で代金の授受が行われていないためです。代わりに、クレジットカードの利用明細書を手渡すことが一般的です。 - 領収書に誤った記載があった場合、再発行を行うこと
領収書を誤って記載した場合、交付先から回収し、再発行する必要があります。誤った領収書は無効になる可能性があるため、訂正印や訂正線で修正するのでなく、新しい領収書に差し替えるようにしましょう。
受領する側の注意点
領収書を受領する側には、以下の2つの注意点があります。
- 領収書の内容を確認すること
領収書には、必須項目が正しく記載されているか、金額や品目が合っているか、クレジットカード決済の場合はその旨が明記されているかなどをチェックしましょう。 - クレジットカード利用明細書およびお客様控えの両方を保管
クレジットカード利用明細書も、領収書と同様に経費の根拠書類として利用可能です。
ただし、商品やサービスの内容についての記載がない場合は使途不明金扱いになる可能性があるので注意が必要です。
また、クレジットカード決済直後に発行される「お客様控え」の方が、利用明細書より一般的に信用力が高いと考えられています。
領収書の書き方
領収書の書き方には、あらかじめ決められた必須項目があります。具体的には以下のとおりです。
- 取引日
- 宛名
- 金額
- 但し書き(品目)
- 発行者名
- 収入印紙(現金受領5万円以上の場合)
※ 消費税法第30条9項1号および印紙税法別表第1の17より
1.取引日
代金を受け取った年月日を記入します。
和暦または西暦どちらでも構いませんが、省略形は不可です。「令和5年」「2023年」とすべての桁を記入します。和暦の場合、元号の初めの年は「元年」と表記します。
2.宛名
支払者に確認して、個人名あるいは法人名を正式な名称で記載します。消費税法上、領収書において、宛名である事業者の氏名または名称を記載する必要があります。
小売業・飲食店業・タクシー等を営む事業者が交付する領収書については、宛名の記載を省略することができます。
3.金額
販売者は、受け取った代金を記載します。通常、税込の金額で、3桁ごとに「,(カンマ)」を打ち、金額の前に「金」「¥」、末尾には「也」「―」を記載します。内訳欄には、税抜金額および消費税額を記載します。
4.但し書き(品目)
但し書きは、買い手が購入した商品やサービスの内容を具体的に記載します。
「文具代として」「書籍代として」など、発行者が何を提供したのかを分かりやすく記載しましょう。「お品代」と表記する場合は、使途不明金として取り扱われることがあるため、注意が必要です。
5.発行者名
領収書を発行する店舗名や企業名を記載します。手書き以外にも社判の押印などでも問題ありません。消費税法の要件は発行者名のみですが、あわせて住所と連絡先を記載することが一般的です。
6.収入印紙(金額に応じて)
受領した現金の金額が5万円以上の場合には、収入印紙を貼る必要があります。金額により、収入印紙税額が異なるため、注意しましょう。
領収書の保管期間
商品やサービスを購入し、受け取った領収書は、いつまで保管すればいいのでしょうか。紙媒体で保存するべきなのでしょうか。また、領収書を紛失した場合についても解説します。
領収書の保管期間は法人と個人事業主で異なる
領収書の保管期間は、法律によって定められています。
- 【法人】
法人税法によると、法人は領収書を受け取った事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存する必要があります。
ただし、決算が赤字の場合は保存期間が10年です。欠損金の繰越控除可能期限が10年であるためです。 - 【個人事業主】
所得税法によると、青色申告事業者は7年、白色申告事業者は5年間保存する必要があります。
領収書の保管方法
紙の領収書の場合は、月別や項目別にファイリングして整理、保管することが一般的です。しかしながら、2022年1月より改正電子帳簿保存法が施行されたことにより、領収書の保管にも変更があります。
紙での保存が義務付けられていた領収書を含む帳簿書類について、一定の要件が満たせば、電子データとして保存が可能となりました。紙で受け取った領収書は、紙のまま保存、スキャナ保存の2種類の選択が可能です。
PDFなど電子データで受け取った領収書は、2024年1月1日以降、電子保存しか認められなくなります。
領収書がない場合や紛失した場合
領収書は、経費の計上や確定申告の際に必要な書類です。しかし、紛失してしまった場合はどうすればよいでしょうか?
領収書を紛失した場合、通常は経費の計上ができません。紛失した場合は、再発行を依頼することができます。
再発行を依頼する際は、購入日や金額など必要な情報を把握しておきましょう。
また、領収書を受領した側には、経費の二重計上の恐れがあるため、領収書の再発行に積極的でない場合もあります。
再発行が厳しい場合でも、出金明細があれば経費の計上ができる場合があります。
まとめ
領収書は、商品やサービスの代金の授受を証明する大切な書類です。領収書には取引日、宛名、金額、但し書き、品目、発行者の氏名・住所、収入印紙などの項目を記載します。
保管期間が定められており、法人なら7年(赤字の場合10年まで)、個人事業主なら青色申告事業者は7年、白色申告事業者は5年です。
保管方法も、紙以外にスキャナ保存も可能です。ただし、2024年1月1日以降、PDFなど電子データで受け取った領収書は、電子保存しか認められなくなります。
領収書は何に代金を支払ったのかを証明する書類ですので、大切に扱いましょう。