消込とは-重要性やメリット、注意点、ツールを紹介
消込は回収漏れを防止する役割を果たしますが、誤った入金チェックをすると取引先とのトラブルが発生することもあります。
本記事では、経理における債権債務の入出金の管理における消込について解説します。消込方法や重要性、トラブルや対処法、成功事例について紹介し、また、効率的に消込を行うためのツールについても解説します。
トラブルなく消込を行えるよう、最後まで読んで参考にしてください。
消込とは
商取引において、帳簿に記載された売掛金等の債権や買掛金等の債務の残高を、実際の入出金情報を照らし合わせて消去する作業を「消込」といいます。具体的には、売掛金として計上している残高と、実際に企業の口座に入金された金額を照合し、請求通りに回収できていれば売掛金を減少させます。同様に、買掛金等の債務についても、引き落としのあった金額を照合して、記録している債務残高を減らします。
消込方法
企業が消込を実際に行う方法として、Excelを利用する手順を以下に解説します。
- 入金情報をExcelに記録
- 売上債権と入金金額とを照合
- 関数等の活用
1.入金情報をExcelに記録
通帳に記載されている入金日や入金名義人、入金額といった情報を、Excelに記録します。
2.売上債権と入金金額とを照合
売掛金と実際の入金金額とを照合し、消込を行います。具体的には、請求先の回収予定金額に対して、実際に入金された金額を消込することで、請求先ごとの売掛金額が把握できます。
3.関数等の活用
関数やフィルタリング機能を利用することで、大量のデータの突合が可能になります。
具体的には、Excelに搭載されたSUMIF関数やCOUNTIF関数などを使って、指定したデータを集計することができます。
- SUMIF関数
検索条件に指定した値と一致するレコードのデータだけを集計可能 - COUNTIF関数
検索条件に指定した値の個数を出力するので重複の有無をチェック可能
また、フィルタリング機能を使って、企業名を抽出しながら1つずつ目視で突き合わせるといった、関数を使用しない方法もあります。
消込の重要性とメリット
消込を行うことの重要性やメリットとして、以下の点が挙げられます。
- 会社の財務状況を正確に把握可能
- 取引先とのトラブルを未然に防止可能
1.会社の財務状況を正確に把握可能
消込は、企業が自社の財務状況を正確に把握するために欠かせないものです。
売上を計上しても、消込を行わなければ、企業は取引先からの売上金を回収できたかどうかを把握することができません。
さらに、消込を行うことで、企業は自社の資金繰り状況や将来の手元資金額を正確に把握することができます。
2.取引先とのトラブルを未然に防止可能
消込を行うことは、取引先とのトラブルを未然に防止する役割を果たしています。
販売した商品に対する入金が期日までに行わなかった場合でも、また入金金額が異なっていた場合でも、消込ができなくなってしまいます。
また、消込をしていないと、取引先が倒産などになっていても気づかないまま、売上債権が貸倒れる可能性があります。
企業は消込を行うことで、取引先に対して督促や信用上限額の引き下げなどの迅速な対応が可能となります。
消込に関するトラブルとその対処法
消込を行うにあたって、注意すべきトラブルおよび対処法について説明します。
トラブル
主なトラブルの原因として以下の点があります。
- 目視での確認が要求される
- 属人化の傾向がある
1.目視での確認が要求される
入出金情報を登録し、突き合わせる作業ですので、消込は目視での確認が要求されます。
この際、請求先の入金金額や振込口座名義と請求先が正しいかどうかなど、ヒトの目によるチェックが必要です。
消込作業が誤って実行されると、例えばすでに売掛金の入金がされているにもかかわらず、二重請求が発生する恐れがあります。
その結果、信用問題が生じるリスクがあるので、慎重さが必要です。
2.属人化しやすくなる
作業の性質上、経験豊富な従業員に一任されることが多く、それによって属人化しやすい傾向があります。属人化することで、作業の分担が難しいので負担が集中してケアレスミスを起こしたり、引継ぎ後にミスが増えたりすることがあります。
企業は、このような属人化を防ぐために対策を講じることが重要です。
属人化は、作業効率や品質に影響を及ぼすだけでなく、個人に負荷をかけることもあります。したがって、企業は属人化を防ぐために、定期的な業務プロセスの見直しや改善を行い、組織全体で業務を遂行することが求められます。
ヒューマンエラーについてはこちらの記事にて詳しく解説しております。
対処法
消込のトラブルを回避する対処法として次のものがあります。
- 代行決済サービスの導入
- 会計ソフトの導入
1.代行決済サービスの導入
代行決済サービスとは、企業が手数料を支払って、一連の請求業務を外注化するサービスです。
一連の請求業務として以下の業務があります。
- 与信審査
- 請求書発行
- 入金管理
- 督促
消込作業をアウトソーシングすることで、社内業務の負担が少なくなります。
2.会計ソフトの導入
会計ソフトを導入することで、経理における消込作業を効率化することができます。
入力と同時に消込が完了するため、手作業よりも作業時間を短縮できます。
また、会計ソフトの導入により、手作業による入力ミスを防止できます。
入力ミスがある場合、貸借に過不足が発生し、会計ソフトが自動的に過不足表示をしてくれるため、作業者は再度確認が可能となります。
消込の実践例と成功事例
消込の対処法を実践することで、どのような変化が起こるのかを紹介します。
- 消込作業のスピード・正確性のアップ
- 誰でも消込が可能
- リアルタイムで入金状況が確認可能
1.消込作業のスピード・正確性のアップ
会計ソフト導入により、手作業による通帳の入出金データの転記作業や売掛金と入金データの目視でのチェックなどの消込業務が自動化されることで、消込作業のスピードと正確性が向上します。
これにより、未回収債権の早期確認や請求先へのスムーズな督促も可能となります。
2.誰でも消込が可能
消込業務は属人化されやすく、誰でも行うことができないことが問題でしたが、会計ソフトを導入することで誰でも消込が可能になります。さらに、代行決済サービスを利用すれば、消込作業自体がなくなります。
従業員は消込業務に時間を費やすことなく、他の業務に取り組むことができ、業務の効率化が見込まれます。
3.リアルタイムで入金状況が確認可能
会計ソフトには、金融機関の入金状況を自動で取り込む機能を搭載しているものがあります。
これにより、従来の通帳記帳では確認しきれなかった入金状況をリアルタイムで確認できます。
さらに、入金データを自動的に取得できるため、会計ソフトによっては消込作業も自動的に行えるものもあります。
消込を効率的に行うためのツールとは
消込を効率的に行うためのツールには、以下のモノがあります。
- 入金管理・消込システム
- AIによる消込自動化システム
1.入金管理・消込システム
入金管理・消込システムとは、従来手作業で行われていたExcelや紙による入力や目視による確認作業を自動化するツールです。
このシステムを導入することで、未入金残高の可視化や、未回収の売掛金照合・催促メールの自動送信など、入金消込に関する作業の効率化が見込まれます。
2.AIによる消込自動化システム
AIを導入することで、消込作業の自動化やAPI連携が可能になり、消込業務の効率化が期待できます。振込人名義と企業名の突き合わせや、消込作業などをAIにより自動化を図ることで作業時間が大幅に短縮可能です。
ルールベースのAI消込の場合、事前に設定した条件で処理が可能であり、複雑なシステム管理が可能です。
まとめ
消込は、企業にとって売上債権の入金確認や資金繰りの把握にとても重要です。
しかし、いまだExcelを使って消込を行っている企業も多いため、膨大なデータ処理をヒトが行うので人的ミスが発生するリスクがあります。
さらに、消込作業が属人化しやすく、二重請求などをしてしまうと信用問題に発展しかねません。
企業は、消込のさまざまな対応策を検討し、効率よく消込を行えるようにしたいものですね。