SaaSとは-特徴やメリット・デメリット・代表的なサービスを解説
現代のビジネスにおいて、注目されているのがクラウドコンピューティングサービスです。このサービスを利用することで、企業はビッグデータを簡単に取り扱うことができます。その結果、データ分析や活用、事業戦略の立案などを効率的に行えるようになります。
クラウドコンピューティングサービスにはいくつかの種類がありますが、この記事では「SaaS」と呼ばれるサービスについて解説します。SaaSの特徴やメリット・デメリット、さらには代表的なサービスの種類についてわかりやすく紹介します。SaaSを導入することを検討されている方は、ぜひご覧ください。
SaaSとは
SaaSとは、Software as a Serviceの略称であり、クラウドコンピューティングの一形態を指します。
SaaSは、ソフトウェアを購入して自分でインストールして使用する代わりに、インターネットのブラウザを介して利用できるサービスです。SaaSのユーザーは、インターネットに接続されたデバイスを通じて、サービス提供企業のサーバーにあるソフトウェアを利用することができます。SaaSの提供企業は、ソフトウェアを運営・管理する責任を持ち、サーバーの保守、セキュリティ対策、バックアップ、アップデートなどを実施します。このため、ユーザーはインターネットに接続するだけで、いつでもどこでもサービスを利用できます。
SaaSを利用することで、ユーザーはハードウェアやソフトウェアの購入や管理にかかるコストを削減できるだけでなく、柔軟な運用方法を検討できます。また、SaaSを提供する企業にとっても、ビジネス機会が広がるだけでなく、開発したサービスを自社でも導入できるため、効率的なビジネスモデルとなっています。
SaaSの特徴
SaaSの特徴は以下のようにまとめられます。
1.クラウド上で提供される
SaaSは、クラウドサーバー上でソフトウェアが提供されるサービスです。ユーザーはWebブラウザやアプリケーションを用いるなどして、クラウド上のサーバーへアクセスができます。
2.時間や場所を問わずに利用できる
SaaSは、インターネットに接続することで、好きな時に好きな場所で必要な機能を利用することができます。そのため、スケーリングに優れているという特徴があります。また、利用料金も従量課金や月額制など、利用状況に応じて柔軟に選択が可能です。
3.複数人による同時作業・編集ができる
SaaSでは、複数のユーザーが同時に同一ファイルのデータ更新や編集が可能です。これは、クラウドサービスだからこそできる大きな特徴です。そのため、従来のように一方がファイルを更新している時はもう一方の作業が滞る、という時間の無駄を省くことが可能になります。
4.多様なアプリケーションが提供されている
SaaSは、企業に必要な様々なアプリケーションが提供されるサービスです。CRM(顧客管理システム)やERP(統合業務システム)など、ビジネスに欠かせないアプリケーションを幅広く取り扱っています。
5.継続的にバージョンアップされる
SaaSは、サービスの提供側が継続的に機能追加や改善をおこなっています。これにより、ユーザーは常に最新のバージョンを利用することができます。このため、最新の機能やセキュリティ対策を利用することができます。
ASPとの違い
SaaSとASP(Application Service Provider)は、ほぼ同じ定義の用語ですが、実際には以下のような違いがあります。
1.用語の範囲
SaaSはアプリケーションやソフトウェアそのものを指します。一方でASPはそのサービス全体やサービス提供事業者を表します。
2.シングルテナントとマルチテナント
SaaSではマルチテナントが採用されています。マルチテナントとは、ひとつのサーバーを複数のユーザーで共同利用することをいいます。マルチテナントのデメリットとしては、カスタマイズ性がシングルテナントに比べて劣ることが挙げられます。ただ、コストを抑えて開発ができるため、ユーザーが支払う料金についても大きな負担なく利用可能です。一方で、ASPは一般的にシングルテナントが採用されています。
シングルテナントとは、ひとつのサーバーを単独のユーザーが利用することをいいます。それぞれのユーザーに対して個別の環境が設けられているため、マルチテナントと比べてカスタマイズ性が高いことが特徴です。その反面、費用は割高になる傾向があります。
SaaSのメリット・デメリット
SaaSのメリット
SaaSには、以下のようなメリットがあります。
1.低コストで導入できる
SaaSは、インフラやソフトウェアの購入や設置が不要で、利用料金を支払うだけですぐに利用が可能です。このため、ユーザーは導入コストを抑えることができます。
2.高い拡張性がある
SaaSは必要に応じて柔軟に利用料金や利用規模を調整できます。アドオンによる機能追加など、スケーラビリティが高く、ビジネスの成長や変化にスピーディーに対応することが可能です。
3.システムの運用・保守が不要
SaaSはユーザーが大部分のシステムの運用・保守(管理やメンテナンス)をおこなう必要がないため、利用者は本来注力すべき業務に集中することができます。サービスの提供側がセキュリティ対策や災害対策用バックアップなどの運用・保守をおこなってくれるため、利用者はITに関する知識や技術を持っていなくても、簡単に利用を始めることができます。
4.継続的な機能追加や改善がある
SaaSは提供側が継続的に機能追加や改善をおこなっています。そのため、常に最新の機能や最新のセキュリティ対策を利用することができます。
5.ユーザーにとっての利便性が高い
SaaSはクラウド上で提供されるサービスのため、インターネットに接続できる環境下であれば、場所やデバイスを問わずにいつでも利用することができます。また、利用料金も必要な分だけ支払うことができるため、ユーザーにとっては利便性が高いといえます。
SaaSのデメリット
一方、デメリットには以下のようなものがあげられます。
1.カスタマイズ性が限定される
SaaSはユーザーが自由にプログラムを変更したり、独自の機能を追加することはできないため、カスタマイズ性は限定されます。サービスの提供側が用意した機能や設定を利用することが前提です。
2.インターネット接続が必要である
SaaSはクラウド上で提供されるサービスのため、インターネット接続が必須です。そのため、ネットワーク障害や回線の速度によっては利用できない場合があります。
3.セキュリティ上のリスクがある
SaaSはクラウド上でデータを管理するため、セキュリティ上のリスクを考慮する必要があります。情報漏洩やウイルスによるサーバー攻撃などの脅威に対して、サービスの提供側が適切なセキュリティ対策をおこなっているかを確認する必要があります。
4.利用料金が継続的に発生する
SaaSは料金を支払うことですぐに利用できるというメリットがある反面、継続的に利用料金が発生します。そのため、長期的に利用する場合はランニングコストがかさむため、注意が必要です。
5.利用規約や契約内容を確認する必要がある
SaaSを利用する場合は、利用規約や契約内容の確認が必要です。特にデータの保管や取り扱いに関する規定などは、法的な問題が生じる可能性があるため注意が必要です。
SaaS型サービスの種類と代表例
以下のとおり、ビジネスに必要な各種機能を提供するSaaSサービスが多数存在します。それぞれの代表的なサービス例と併せて紹介します。
1.Web会議
Web会議の代表的なSaaS型サービスとしては、ZoomやMicrosoft Teams、Google Meetなどがあげられます。これらは世界中で普及しているWeb会議サービスであり、ビデオ会議やウェビナー、オンライン授業などの用途に利用されています。ユーザー数も急速に増えており、特にMicrosoft TeamsやGoogle Meetは、同社の他サービスとも親和性が高いという特徴があります。
2.ビジネスチャット
ビジネスチャットの代表的なSaaS型サービスとしては、SlackやChatworkなどがあります。これらのツールは社内のコミュニケーションやリモートワークに活用されており、ビジネスの効率化に貢献しています。
3.プロジェクト管理・タスク管理
プロジェクト管理・タスク管理の代表的なSaaS型サービスとしては、AsanaやWrikeがあげられます。これらは、チームでのタスク管理やプロジェクト管理ができるサービスで、カレンダーやガントチャートなどの管理機能が充実しています。企業のプロジェクト管理などに広く活用されている他、個人のタスク管理にも利用されています。
4.オンラインストレージ
オンラインストレージの代表的なSaaS型サービスとしては、Google DriveやDropbox、OneDriveなどがあげられます。これらのツールはファイルの共有やバックアップ、複数人での作業などに活用されます。企業が持つ大量のデータをクラウド上に保管することで、セキュリティやバックアップなどの面で安全かつ効率的なデータ管理が可能になります。
5.会計ソフト
代表的なSaaS型サービスとしては、マネーフォワードやfreeeなどがあります。これらは、仕訳や給与計算、決算書作成などの各種会計機能を備えており、個人事業主から中堅企業まで幅広い規模の企業で利用されています。また、多くのサービスが銀行口座やクレジットカードとの連携機能を備えており、煩雑な収支管理や申告書作成などを効率的におこなうことが可能です。
6.ERP
代表的なSaaS型サービスとしてはSAP(S/4HANA Cloud等)があります。財務・会計、購買、在庫管理、生産管理、人材管理、販売管理、サプライチェーン管理など、基幹システムとしての役割を果たすために、様々な機能を備えています。また、最新技術のAIやIoTなどにも対応しており、世界的にシェアの高いサービスとして知られています。
7.SFA・CRM
代表的なSaaS型サービスとしては、Salesforceやeセールスマネージャー、Sensesなどがあります。これらのサービスは営業やマーケティング、カスタマーサービスなどの業務に対応しており、営業担当者の業務支援や負荷の削減に寄与します。
8.勤怠管理
代表的なSaaS型サービスとしては、タッチオンタイムやジョブカン勤怠管理などがあげられます。勤怠管理サービスをSaaS型で利用することで、従業員の出勤・退勤や勤務時間を可視化し、給与計算や労働時間の管理を効率的に行うことができます。
SaaS導入のための確認要件と選定ポイント
SaaS導入のための確認要件
ここまで解説したように、SaaSには多くのサービスがあります。そのため、どのサービスを利用すればいいのか迷われるかもしれません。SaaS型サービスを導入する際には、以下のような要素を意識することが重要です。
1.セキュリティ
SaaSはクラウド上で提供されるため、情報漏洩やサービス停止などのリスクを含んでいます。従って、導入するSaaSサービスがセキュリティ面に配慮しているかどうかを確認し、保有する重要なデータをどのようにして守るのか、必要に応じて対策を講じます。
2.カスタマイズ性
SaaSは基本的に汎用的なサービスであるため、企業のニーズに完全にマッチすることは多くありません。そのため、導入するSaaSサービスのカスタマイズ性を確認し、自社の業務に合わせて最適化できるかどうかを検討することが重要です。
3.料金体系
SaaSの料金体系は多くの場合、利用期間に応じた月額課金制や利用回数に応じた従量課金制になっています。導入するSaaSサービスの料金体系を確認し、予算に合わせて導入できるかどうかを検討する必要があります。
4.サポート体制
SaaSサービスにはトラブルや不具合が発生する可能性があります。そのため、導入するSaaSサービスのサポート体制を確認し、問題発生時に迅速かつ適切な対応ができるかどうかを検討する必要があります。
5.ユーザーインターフェース
SaaSサービスを導入する際には、ユーザーインターフェースの使いやすさが重要なポイントです。企業内で使用されるユーザーの利用率向上や負担軽減のためにも、導入するSaaSサービスのユーザーインターフェースを確認し、使いやすいものを選ぶことが望ましいです。
このように、、セキュリティやカスタマイズ性、料金体系、サポート体制、ユーザーインターフェースなど、さまざまな要件の確認も必要です。SaaSを導入する際には慎重な検討が求められます。
SaaS選定のポイント
SaaSを選定するにあたっては、上述の確認要件を踏まえ、以下のポイントを企業が判断すべきです。
1.業務に適した機能を備えているか
多くの機能を提供していることが重要なわけではありません。自社のニーズに合わないサービスを選定することは避けるべきです。代わりに、求める業務に適した機能が提供されているかどうか、または業務に合わせたカスタマイズが可能かどうかを確認することが大切です。
2.セキュリティが担保されているか
SaaSが扱う企業の重要な情報を保護するために、セキュリティ面の担保が重要です。サービス提供者がどのような対策を講じているのかを理解することは必須ですが、それを鵜呑みにせず自身で確認をすることも必要です。
自社でセキュリティ対策を講じなくても、選定にあたってセキュリティに関する基本的な知識は必要です。
3.信頼性と安定性が担保されているか
SaaSが提供するサービスが安定していることは、業務上重要な要素です。システムの稼働率やダウンタイムの情報、その他運用方法について事前に確認をおこない、信頼できるサービス内容かどうかを確認することが必要です。
4.コストが見合っているか
先に述べたように、SaaSには月額課金型や利用回数に応じた課金型など、さまざまな料金形態があります。自社で使いたい機能や必要なユーザー数、導入コストなどを考慮し、総コストを比較して判断する必要があります。
5.サポート体制が整っているか
SaaSはどれだけ注意していても、何かしらのトラブルや問題が発生してしまうことがあります。そのため、サポートの種類や範囲、対応時間帯、言語対応、問い合わせ窓口などを確認し、トラブルが発生した場合のサービス提供側の対応力を判断する必要があります。
6.ユーザビリティが高いか
SaaSを利用するユーザーが使いやすいかは、選定基準の一つとなります。企業は、ユーザビリティに関する機能性、使い勝手、ユーザーインターフェース、操作性などを比較し、社内での利用率や作業の効率化につながるかどうかを考慮する必要があります。
以上が、SaaSを選定するにあたって企業が判断するべき基準です。企業は、これらのポイントを総合的に判断し、最適なSaaSサービスを選ぶことが求められます。
まとめ
SaaSとは、Software as a Serviceの略称であり、クラウドコンピューティングの一形態を指します。本記事では、SaaSの特徴やメリットデメリット、SaaSを導入する際に確認すべきポイント等について解説しました。
SaaSの市場は今後も拡大が予想されており、クラウド上で提供されるビジネスアプリケーションとして、企業の業務改善や効率化に貢献する重要なサービスです。SaaSを導入する際には、自社のニーズやビジネスモデルに合わせて適切なサービスを選定することが求められるため、今回の記事を参考に検討を進めていただければと幸いです。