監査とは – 目的や種類について解説
企業活動において、「監査」というキーワードに触れる機会は少なくありません。監査は経営の健全性を確保するために重要な仕組みであり、一定の基準を満たす企業は監査を受けることが義務付けられています。しかし、この「監査」について、多くの方が「具体的にどんな目的を持って行われるものなのか」「なぜ監査が必要なのか」などの疑問を抱えているかもしれません。まずは「監査」の意義を理解することが重要です。
本記事では、監査の基本的な概念から各種監査の種類や目的、さらに監査対応の負担が大きい理由や電子化との関係性について探っていきます。
監査とは
監査は企業に対して、経営の透明性と信頼性を確保するためのプロセスです。このプロセスでは、法律や会社の規定に基づいて経営状況を監督・検査し、健全かつ合理的な経営が行われているかを評価します。また、監査は一般的に、公認会計士や内部監査室など、独立した第三者によって行われます。
監査では、監査人が財務諸表や業務実績などの情報を収集して、法令やルールに適合しているか 内部統制が適切に機能しているかなど 多岐にわたる要素を評価します。監査の種類などは、次の「監査の種類と目的」セクションをご覧ください。
なお、「会社法」「金融商品取引法」などの法令によって義務付けられている監査を「法定監査」と呼びます。証券取引所への上場や会社の規模など所定の要件に該当する会社は必ず監査を受けなければなりません。
監査の種類と目的
監査は企業の経営状況を客観的に評価し、情報の正確性と信頼性を確保したり、法令やルールに沿って業務が行われていることを確かめたりするために行われます。特に大企業には株主や投資家、債権者などの社外のステークホルダーが関与しており、彼らにとっては企業の経営状況を正確に把握することが重要です。
監査は、外部の独立した監査人によって経営状況や財務情報を評価し、正確な情報を提供することで、企業の信用向上に寄与し、ステークホルダーに安心感を提供します。法定監査として行われる場合、監査法人や公認会計士などの監査人が財務諸表や経営の適正性を審査し、その結果を報告します。
以下に主な監査の種類と目的をまとめました。
1. 会計監査
目的:財務諸表を対象として会計処理の適正性や経営状況の健全性などを評価し、投資家や債権者などに対して報告すること。
会計監査は財務諸表の監査を中心に行われます。監査法人や公認会計士などの第三者が会社の記帳プロセスや会計処理などを検証し、財務諸表の信頼性を確保します。これにより、投資家や債権者などが企業の健全性や経営実績を正確に把握できるようになります。
2. 業務監査
目的:業務プロセスやリスク管理の適正性を検証し、企業の業務遂行における改善点やリスクを特定すること。
業務監査は経営目標の達成に向けて、法令やルールに沿って合理的に業務が行われているかを評価するために行われます。そのため、会計業務以外のあらゆる業務が対象となります。内部監査室やコンサルティングファームが独立して行うケースが多いです。
3. 監査役監査
目的:役員の業務執行の適正性を評価し、株主利益を守ること。
監査役監査は企業の監査役によって行われます。監査役は企業の役員の業務執行を監督し、株主利益を守るために監査を実施します。役員の行為や判断が法令や会社規程に則っているかを確認し、企業の健全性を保証します。
4. 内部監査
目的:内部統制の適切性を確認し、不正を防止し、リスクを管理すること。
内部監査は企業内部に設置された任意の監査組織によって行われます。経営陣に対して独立した立場から経営状況やリスク管理の適切性を評価します。内部監査は業務監査や監査役監査と重なる部分がありますが、内部監査は経営陣への助言や改善提案を重視する点が異なります。
各監査の関係性
監査には、監査対象による分類と監査人による分類があります。特に大企業では三様監査と呼ばれる監査役、会計監査人、内部監査人それぞれによる監査が行われます。これらの監査はそれぞれ異なる立場の監査人によって実施されるため、目的が異なります。
会計監査は財務諸表の適正性などを評価し、主に監査法人や公認会計士が行います。一方、業務監査は取締役の職務執行やすべての部門の業務処理を対象に、経営の透明性や適格性を確認するため、内部監査人などが業務の実施状況を評価します。
これらの監査は重複する部分もあるため、三者間で意見交換や協議を行い、監査の範囲を明確にすることが重要です。監査の重複を避けることで現場の業務における負担を軽減し、効率的な監査を実現します。また、監査の有用性や品質向上にもつながります。
監査対応の負担が大きい理由
監査対応の負担が大きい主な原因は以下のような点があげられます。
- 内部統制が機能していない
内部統制が不十分な場合、ミスや不正が発生しやすくなり、監査対応に時間と労力を要します。例えば、財務諸表や関連書類に不備が多くあると、経理部門などの業務負担が増え、十分な準備や対応が難しくなります。 - 業務・文書のデジタル化が進んでいない
紙ベースの文書管理では必要な情報の検索が煩雑になり、監査対応に手間がかかります。さらに、紙ベースの帳票運用は人的ミスやリスクを招きやすく、内部統制の問題も浮き彫りになります。 - 規模の拡大
企業の成長に伴い、監査範囲や業務量が増え、監査対応の負担が増大します。同じ種類の業務プロセスにも複数のパターンが派生し、より複雑な監査対象を検証してもらうためコストがかかります。 - 監査頻度と複数の監査
頻繁な監査や複数の監査機関からの対応が必要な場合、監査への対応が複雑化します。仮にまったく同じ監査対応が必要な場合、四半期監査の対応には年度監査の4倍のコストがかかります。
これらの問題を解決するには、内部統制の改善やデジタル化の推進、監査機関との協力が重要です。効率的な監査対応を行うためには、組織全体での取り組みが不可欠です。特に文書の電子化は監査対応の効率化に役立ちます。
電子化と監査対応
紙ベースの文書運用ではヒューマンエラーが起こりやすく、不正のリスクが高まります。しかし、文書を電子化することで業務の正確性が向上し、文書の紛失や劣化の心配がなくなります。さらに、電子化によって個別の閲覧権限やシステムによる証跡の記録が可能となり、より強固な内部統制を構築できます。
また、文書の電子化により検索性が向上します。監査では多くの文書の提出が求められることがありますが、電子化された文書は簡単に検索できるため、必要な文書を迅速に参照・提出できます。これにより、監査対応の負担が軽減され、円滑な監査対応を実現できます。
まとめ
監査は企業の健全性を確認し、情報の正確性と信頼性を向上させる重要なプロセスです。特に大規模な企業では株主や投資家、債権者などに対して経営実態を明確に示す必要があり、法律によって監査が義務付けられます。
監査には会計監査、業務監査、外部監査、内部監査、監査役監査などがあり、それぞれ異なる目的で行われます。
監査対応の負担が大きい主な原因は内部統制の機能不全、業務の未デジタル化、企業の規模拡大、複数の監査などが挙げられます。
内部統制を強化し、文書の電子化を進めることで監査対応の負担を軽減できます。円滑な監査対応を実現するためには監査機関との協力やコミュニケーションが重要です。
これにより企業は健全な経営を維持し、ステークホルダーに対して信頼を築くことができるでしょう。